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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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実家の離れ

 仁藤さんは子供の頃、年末年始には実家に帰っていたのだが、子供時代は疑問に思わなかったことが今にして思うとおかしな事を体験したそうだ。


「それで、一体どんな体験をしたんでしょうか?」


「ああ、別に何か事件が起きたわけじゃないんですが……何であんな行事があったのかが謎でして」


 年末年始に彼女が実家に帰るといつも奇妙なことをさせられたらしい。そのことに説明が付かないので考えて欲しいとのことだ。


「アレがあったのは小学生の時代までですね、卒業して中学生になったらそれをさせられることは無くなりました。年齢的なものなのか、小学生であることが重要だったのかは分かりませんけど……」


「なるほど、何かをやらされたのですか?」


 そう質問をすると、仁藤さんは少し考えてから話してくれた。


「特別おかしいってわけではないんですがね、親の実家に帰るじゃないですか、それなりに歓迎してくれるんですがね、何故か寝るときは私だけは慣れに寝かされたんです。ただそれだけなんですが、その離れには上下水道が整備されていて一晩過ごすのに何も困ることは無いんです。ただ……外から鍵をかけられるので逆に言えばその部屋の中だけで一晩引きこもらないとならないんです」


 それは田舎の奇習のようなものだろうか? それだけなら何か決まりでもあるのかもしれないが……


「小学生も少し上の学年になると自分の部屋で寝ていたので一人で寝るのは構わないんですよ。ただ、その離れで一晩寝ると、夜にガタガタ言う音で目が覚めるんですよ。灯りを付けると入り口の戸がガタガタ揺れているんです。その扉は簡単なかんぬきと、鍵が付いているので外側から開けようと思ったらかんぬきを取って鍵を開けないとならないんです。もしも家族の誰かならそれらは開けられるはずなんですよ。それなのに開けようとしている誰かは入って来れないようなんですよ」


 なんとも言えないところだ。怪異のようだが何かが見えたわけでは無いのだろう。


「それだけで、実家に泊まるのも一日だったので我慢していたんですが……実家のおじいちゃんがこの前亡くなりまして、その時に私に言い残したことがあるからと寝たきりになったときに呼ばれたんです。何を言いたいのかと思っていました。もう中学生に上がって、受験が見えてきた時期だったんですが、大事な話だからと両親に車で連れて行かれたんです」


 そうして彼女はあの音の真相を聞いたそうだ。


「おじいちゃんはあの音が私の姉のものであることを話しました。私はずっと一人っ子だと思っていたのですが、昔には姉がいたそうです、まあ……私が生まれる前に亡くなったそうなので姉と呼んでいいのかは分かりません。ただ、その姉は小さい頃にかかった病気で治療も限界があって苦しんで亡くなったそうです。それ以来、私が来ると家のそこかしこで姉の影を見たので私を隔離していたそうです。姉が可哀想だなとは思ったのですが、私も怖いものは怖いですからね、そういうものかと思いましたよ。ただ一つ納得が出来ないんですが……」


「何かおかしな事があるんですか?」


「姉はずっと病弱だったそうなんですが、毎回私の泊まった離れのかんぬきは引き抜かれていたそうなんです。姉は小学生になる前に亡くなったそうですが、そんな子供に力があるんでしょうか? 姉は幽霊になっても成長しているのかと思ったんですが、最近ではアレが姉だったかどうかは素直に信じられないんですよ。知っている人はもう全員鬼籍に入ったので真相は全部闇の中ですが、両親が実家を相続したのに近寄ろうともしないことが何かあったんじゃないかなという疑惑の根拠になっているんです」


 結局、真相は不明だが、何かがあったことは確かだそうだ。私には見当も付かないので『きっとお姉さんが寂しがっただけでしょう』とだけ言っておいた。きっと真相が明らかになることは無いだろうし、そのもっともらしい話を信じておけば傷つく人は出ないだろう。最後に『その実家もお姉さんの思い出の場所かもしれないですし、そっとしておいてあげた方が良いかもしれませんね』と、あまり関わらない方がいいですよと暗に言っておいた。

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