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中古イヤホン

 湊さんはフリマアプリでイヤホンを買ったときにトラブルになったそうだ。オカルトと関係なさそうなものだが、どうにも不穏な感じがしたし、オカルトっぽいので話を聞かないかと持ちかけられた。


「イヤホンを購入したとのことですが、何があったんですか?」


「はい、まずイヤホンを買う時に出来るだけ使用感がないものを選んだんです。やはりイヤホンが汚れているといくら洗っても耳に刺すのには抵抗がありますからね。それから出来るだけ安いものを探したんです、ただ、どうにも怪しげな製品が大量にあったので困り果てて動画サイトのレビューをあてにしたんです」


 そこで初めて技適というシステムを知ったそうだ。出品されているもので安いものの多くは法律上の手続きを経ていないことを知ったらしい。


 その結果、イヤホンのケース写真を全部眺めてマークが確認出来るものに機種を絞ったそうだ。


「おかげで選択肢が一気に狭まったので、最低限使用して違法ではないワイヤレスイヤホンを候補にしていきました。ほぼ捕まらないとは言え違法な品をつかうのは気が進みませんから」


 そうして探した結果、いくつかの機種が候補になったと言う。その中から耳に入れる部分が出来るだけ綺麗なものか、イヤーピースを交換出来るものを選別した。残ったものから出来るだけバッテリーが劣化していないであろうものを選んだところ、一つだけ極端に安いものがあった。その出品者と連絡を取って購入可能かどうか訊ねて、それとなく値段が安い理由も聞いたそうだ。


「出品した方はイヤホンを買ったけれど、ワイヤレスだと知らず、スマホと接続が出来なかったので捨て値で売り払うことにしたと返答をしてきました。その時はお年寄りなのかなと思ったくらいで、多分よく分からないまま店員にお勧めされたものを買ったのかなと思いました。全員とは言いませんがワイヤレスイヤホンをスマホに繋ぐのでさえ重労働だと感じる方がいるのは知っていますから。ただ、今にして思うのですが、なら何故フリマアプリは当然のように使えるのだろうと思うべきでした」


 イヤホンは購入後二三日で届き、届いたものが新品に見えたので出品者に高評価を送って早速スマホとのペアリングを始めたそうだ。


「そこまでは順調だったんですがね、始めにペアリングしようとしたときに『○○のイヤホン』と表示されたんですよね。どう考えてもおかしいのでいったん電源を落として再接続したら普通に機種名が出たんです。それで安心してスマホで音楽を聴こうとしたんですよ」


 そこで彼女の表情は曇った。そこまではまだおかしな話はほぼ無い。


「スマホと繋いで早速音楽を聴こうとしたんです。曲は女性ボーカルの有名なものです。スマホ単体で再生したときにきちんと音が出るのは確認済みです。イヤホンを耳に入れて再生してみました、そこで聞こえてきた……いえ、ほとんど聞こえなかったのですが、くぐもった声のようなものが聞こえたんです」


 なるほど、そこで怨霊の声でも聞こえましたか?


「いえ、その時はもしかして出品者は不良品を処分するためにそれを隠して出品したのかと思いました。時々そういう悪質な出品者はいますからね。だからその時も安易に出品者の評価をしたのを後悔しました。動作確認せずに評価してしまったので向こうはもう入金されていますから」


 それで、そのイヤホンは結局どうしたんですか?


「音質が悪いとかは結局無かったんですよ。ただどうにもならない問題がありまして……何故か幼児向けの曲が再生されるんです。スマホでかかっている曲はまったく違うんですよ? しかも曲が終わる度に子供が喜んでいるような声が鳴るんです。音質には問題無いんですがねえ……聞ける曲があまりにも限られますし、曲の合間に挟まる子供の声も不気味なのでさっさと処分してしまいました。もともとジャンク品同然の値段だったので運営相手にゴネる気力も無かったんです」


 結局、声の主は分かったんでしょうか?


「いいえ、それはさっぱり。ただ、出品者が私が落札をした後にアカウントを消しているのは確認しました。だから文句を言う先も無いですし、それからその辺の家電店で買ってきたワイヤレスイヤホンをつかうことにしました、そちらだと問題無いんですよねえ……となるとあのイヤホンがおかしかったわけで……深くは考えたくないですね」


 話を聞いた上でほとんど何が原因かは分かっていないそうだが、どこかオカルトっぽさを感じたので私はそれを記録し、こうして話とすることにした。

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