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大容量ファイルとパソコン

 古屋さんはエンジニアをしているのだが、その職業にしては似合わない場所で心霊体験をしたらしいので話を聞かせていただいた。


「アレには参ったよ、確かにシステムを動かすときにみんなして祈祷したり、サーバーにお札が貼ってあるくらいなら見たことがあるよ。ああ、それも意外だったかな? しかしその程度であれば慣れていたんだけどさ」


 どこで何を見たんですか?


「いきなりだね、まあいいか。グダグダ長話をしたいわけでもないからね。そうだね、知っていると思うけれどパソコンの部品はほとんど全部海外産なのは知っているよね? 設計はいろいろなところがしているけど生産は大体海外だよ。それでその時は新人が入ってくるというからPCを設定したものを渡すことになったんだ」


 そこに何かがあったんですか?


「ああ、あると言えばあるんだけどね……最近のパソコンは軌道に数回失敗したらリカバリを提案してくるのは知っているよね? そこそこのスペックのものを新人のために組んだんだけど、何故かまともに動かないんだ。何故か全ての動作がとんでもなく遅くってさ、一通りチェックしたけど異常は無いんだ。結局、新人にセットアップをやらせることにして、リカバリしてまっさらにしておけと言われたんだ。初期状態でまだ遅ければその機種の問題だからその判定をしてくれと任されたんだよ」


 パソコンの中に何かあったとかそういう話でしょうか? そう訊ねると、彼は少し迷った様子で躊躇いながらも頷いた。


「そうだね、ある意味では中に入っていたよ。ああ、ケースを開けたらお札が……とかそういう事じゃないんだ。一通りリカバリをして起動したんだよ。そこからが問題でさ、リカバリといっても完全に削除して入れ直す方法を採ったから中身のデータは残らないはずなんだよ。だからそこまでやれば流石に動くようにはなったんだ。ただ、それからひとまずの設定を始めたんだ」


 まだ話が見えてこないな。一体何を見たのだろうか?


「ああ、不満そうだね。問題はフォルダの中にあったんだ。何故かは分からないけれどやたらシステムドライブのSSDの容量が少なかったんだ。空き容量だよ、全ての容量は合っているのに、何故か空き領域がやたらと少なくてね、何か必要無いファイルが無いか探したんだ。そうしないとドライブだけでも交換する必要があるかもしれないからね。それで色々見たんだけどね、音楽の入っているフォルダだけがやたら大きかったんだ。そのフォルダを覗くと数十GBもある音楽ファイルが入っていたんだよ。即座に消そうと思ったんだけどさ、興味が湧いたんだよ。どうせサービス残業なのだから無駄な時間を少し使うくらい自由だろう?」


 そうですね、その音楽ファイルに何か問題が?


「そう、そのファイルをデフォルトのプレイヤーで再生してみたんだ。そうしたらずっと外国語の……アレはお経なのかな? 生憎宗教には詳しくなくてね、とにかくそういう祈りとか経文みたいなものを唱える声がずっと続いているんだ。十分くらいは再生してみたかな? よくこんなに長く唱え続けられるものだと思ったけど、大きすぎるから収録した人には申し訳ないけど消したんだ。そうしたらパソコンが再起動しようとしたところで落ちるようになったんだ。おかげでリカバリのおかわりだよ。それでリカバリしたらやはりその音声ファイルが残っているんだ。理屈なんて付かないけど、このファイルが無くなればまともに動かないと分かってね。新人には申し訳ないのだけど、電気街に出向いてパーツを揃えるところから始めることになったんだ」


 そうして力なく彼は笑う。


「電気や電子はオカルトと無縁って思われてるけどさ、案外こういう事って多いんだよ? 信じられないかもしれないけどね、案外そういうのと縁があるんだよ」


 そして最後に『新人には気の毒なことだったよ』と悪びれた様子も泣く彼は言う。

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