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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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漆黒の神社

 真希さんは子供の頃に記憶に残っている場所があるという。そこがどこにあるのか分からないのでヒントだけでも掴めないかと聞かれたので、これも奇譚の一つだろうと思い話を聞いた。


「場所はおばあちゃんと一緒に行った神社なんですけど、ああO県の話です。昔はそこに住んでいたので。そこの神社で大きいものを探しているんですよ」


 彼女はそう言ったので、私は真っ先に大きな鳥居で有名な某神社を思い出した。


「真っ先に思いつくのは大きな稲荷神社がありますけど、そこではないんですか?」


 私の質問に真希さんは首を振る。


「そこは有名ですから真っ先に調べてみました。ただ記憶とはどうしても噛み合わないので違うんですよ」


 それからその神社の特徴について話してもらった。


「まず鳥居なんですけど大人の背丈の五倍くらいでしたかね、その鳥居なんですけど全部石で出来ていたんです。先ほど言った神社は金属がつかわれていますよね? そこはどうやって作ったのかは分かりませんが、大きな石で継ぎ目のない鳥居だったんです」


 そしてその神社は奇妙な色をしていたと言う。


「鳥居もなかなかおかしいんですが、本殿は真っ黒なんです。柱から屋根まで黒一色で統一されていました。子供の頃の印象なのですが、なんだかつやつやした黒さだったんですよ。ペンキの塗り立てみたいに見えましたが、今にして思うと漆の方が近いかもしれません。その建物の前に賽銭箱が置いてあったんです。それだけが真っ赤で浮いていました。だからとても印象に残っているんです」


 そんな神社があれば有名になりそうなものだが、そんなものが見つからないなんて事があるのだろうか? その辺り一帯にそんな神社の存在を聞いたことはない。神社の全てを知っているわけではないが、そんなに特徴的ならオカルトマニアには有名になりそうだが何故知らないのだろう?


「ところでその神社にどうやって行ったのですか? 例えば山を登ったとか、階段が長かったとかのヒントが欲しいんですが」


「それが……おばあちゃんに手を引いてもらっていったのは覚えているんですけど、そこまでどこをどう通ったかはさっぱり覚えてないんですよ。車に乗って寝ていたというのはおばあちゃんが免許を持ったことはないので無いと思います」


 困ったな、ヒントが欠片も無い。そんなに特徴的なのに過程が一切省かれている。それでは一体どこにあるのか見当も付かない。


「ああ、そういえばおばあちゃんが賽銭箱に入れたお札が印象に残っているんです。何故かそれだけが印象に残ったので調べてみたんです。始めは古銭の類いだと思ったんですが、どうやら軍票のようでした。見た目のヒントから調べたらそれが一番似ていたんですよ」


 軍票がお賽銭? そんなことをするのだろうか? 今じゃ小銭だって手数料が馬鹿にならないからと言われているのに、換金出来るかも怪しい軍票を入れたということか? 確かにその筋のマニアには受けるかもしれないが、神社がそれを受け取っても困るのではないだろうか?


「それと……関係があるのかどうかは分からないんですが……その後お葬式に出たんです。当時は葬儀がどういうものか分からず焼香もせず座っていただけなのですが、当時叔父の一人が実家にお金の無心に来ていまして、その人が亡くなったんですよ。もちろん食べるにも困っていたような方だったので命の危険があってもおかしくはないんですが……出来ればそれにおばあちゃんが関わっているとは思いたくないですね」


 なんとなくだがそれは神社なのか怪しい気もしてきた。願いを叶えると謳う神社はあるが、それは呪いの類いではないだろうか?


「分かりました、伝手を当たって調べておきます。見つかったら連絡しますね」


「お話を聞いてくれてありがとうございます。何か分かったらすぐ教えてくださいね」


 そう言って私たちは別れた、彼女には申し訳ないのだがその神社について調べることはしていない。なんとなくではあるが不吉なものを感じたからだ。その神社は謎のままということにしておいた方がいいのだろう。そんなわけでそこがどこにあるのかとか、何を祀っているかなどは一切不明のままだ。ただ、そういう場所があると言うことで人間関係には気をつかった方が良いような気にはなった。

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