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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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メッセンジャー

「まったく、何でもかんでもネットネットと面倒な社会だよ」そう不動さんは呟いた。何かいやな思いをネットでしたのでその話をしたいと言うことだそうだ。心霊とは関係無いそうなので断ろうと思ったが『怖い話なのは違いないぞ』と付け加えられたので一応聞いておくことにした。


「いやあ、最近じゃ何でもかんでもスマホだろ? 俺もいい年だがスマホくらいは使えないとと思って大枚はたいて買ったんだよ。アレってかなり高いのな、よくガキが持ってるものだと思うよ」


 始めはな、スマホを契約して勉強してたんだよ。ほら、本屋とかで売ってるだろ? 初めてでもできるスマホみたいなタイトルの本だよ。それを読みながら四苦八苦しながら設定してな、ようやく使えるようになったんだよ。アカウントがどうだとかかなり面倒だったな。


 それから不動さんはスマホを使って早速いろいろなことに使ったそうだ。まあそれなりのお歳の男性が目当てにするものなど大体そういうものということだ。


 便利なもんだと思ったよ、贔屓にしてるねーちゃんの連絡先も入れたしな。これで俺も現代人だななんて思ってたんだよ。いい気になってたもんだ。それがマズかったんだろうな……


 始めはスマホに届いたメッセージだったんだよ。『付き合ってください』とだけ書かれたメッセージが届いたんだな。俺だってずぶの素人ってわけじゃない、それなりに世の中の汚いところにも触れたしな、すぐに怪しいものだと思って無視したよ。ところがソイツはしつこく送ってくるんだ、迷惑だったんだよ。


 ほら、SMSだったか、アレって電話番号が相手に伝わるだろ? 俺もいい加減腹が立ってさ、送ってきた奴に間違ってるぞと言ってやりたくなったんだよ。新しく契約した番号だったしな、どうせ番号の使い回しで以前の使用者と間違えてるんだと思ったんだ。昔から携帯を新規契約するとそういうトラブルはあったからな。


『おい! この番号はお前の知ってる奴の番号じゃねえんだよ! 二度と送ってくるな』とだけ言って電話を切ったんだ。どうせ向こうにはこちらの番号は知られてるんだ、これだけ言っておけば分からないことはないと思ったよ。


 そうしたら次の日からメッセージの文面が変わっていってな、『大好き』『知ってる』『付き合って』とか酷い有様だったよ。アレって送信料が取られるんだろ? 金を払って無駄なことをしているなと思ったもんだ。こりゃ相手をするだけ無駄だなと思って拒否リストに載せて届かないようにしたんだよ。今にして思えばアレは悪手だったよ。


「何かそれから起きたんですか?」


 何かね……そんなかわいいもんじゃねえよ。それから番号を次々変えながら送ってきやがる。おかしいだろ? 人違いなのはハッキリ言ってやったのに平気でこの番号にしつこく送ってくるんだ、意味が分からなかったよ。


 俺もな、携帯電話に詳しいわけじゃないんだが、そんなに気軽に電話番号って変えられるものじゃないだろ? それなのに毎回違う番号からメッセージが届くんだ。不気味になってな、スマホを解約したんだよ。今じゃモバイルルーターを使ってる。これなら電話番号でメッセージを送ってくることも出来なくなるだろ? SIMカードは解約の時に処分してもらったよ。これで解決したと思ったんだがなあ……


 不動さんは苦虫を噛みつぶしたような顔をして吐き捨てた。そしてケータイをとりだしてわたしのほうに画面を向け、そこに写っているものを見せてきた。


 そこにはただ一文『これ?』とだけ書かれた文章が表示されていた。


「これだけなら間違いかもしれませんよ、誰から送ってきたか分からないんでしょう?」


 私が気休めを言うと、彼はイライラしながら答えた。


「分かるんだよ、これを書いてる奴は同じ奴だ。俺の勘がそう告げてるんだよ、結構当たるんだぜ」


「ああ、それとあんたはこれを後悔したいんだろう? 是非そうしてくれ、それでこのクズに『二度と送ってくるな』としっかり伝えておいてくれよ」


 それだけ言って不動さんは席を立った。普通はこんな事をわざわざ書き残したりはしないのだが、彼のケータイがもう停波したはずの3Gを使っているキャリアの古い型であり、そこにどうやってメッセージを送ったのかが分からなかったのでここに書き記しておくことにした。

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