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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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現代文と謎のテスト

 木田さんは昔、高校に通っていた頃奇妙なことがあったと言う。


「あれは未だになんだったのか分からないんですがね、そういうこともあるんだなと思いましたよ」


 その日、木田さんは登校するとクラスの皆が無言で勉強しており、珍しいこともあるものだと思い自分も一限の現代文を予習することにした。


 不思議なんですがね、現代文の参考書を読んでみたのですが、見たことのない文章が書かれていたんですよ。一応その日の予習はしてきていたんですがね、その時に読んだ内容とまったく違うんですよ。それに何故か読めるのに意味が頭に入ってこないんですよ。


 日本語で書かれているはずなのにさっぱり意味が通じないんですよ。まるで適当にひらがなと漢字を並べたような文章でした。それを必死に読んだのですがどうしても分からなかったんですよ。諦めて参考書をしまって一限までぼんやり過ごしたんですが、何故か教室が妙に静かなんですよね。


 それから一限が始まるなり小テストをすると教師が言ったんです。「ああ、このためにみんな勉強をしていたんだな」と思いながらテストを受けました。テスト自体は難しくなかったんですがね、何故かテストの方は普通の日本語で書かれていたんです。だからテストの結果には自信がありました。


 でもね、と言って木田さんは続けた。


 何故かテストの途中で寝てしまって、目が覚めたら一限より前の時間だったんです。クラスの中は普通に話し声の聞こえるいつもの景色でした。何があったのかは分かりませんでしたが、多分夢でも見たのだろうと思いました。


 その後、一限が始まる前のホームルームで沈んだ顔をした担任がやって来まして、現文の教師の訃報を告げました。それと何の関係があったのかは分かりません。ただ、その先生なのですが、交通事故で亡くなる直前に随分と意識が混濁していたらしいと聞きました。それでなんとなくあの夢の中の参考書が支離滅裂なものだったのかなと思いました。


 この話だけならそれで終わるんですがね、何故かその夢の中のテスト内容は事細かに覚えていたんですよ。それから新任の現代文の教師がすぐに来て無事進んで行ったんですが、問題はその期末テストでして……


 何かあったのでしょうか?


 全部というわけではないのですが、そのテストは新任の教師が作ったもののはずなのに何故かその夢の中で受けたテストの問題が出てきたんですよ。事前に勉強していたのでその時のテスト結果は良いものになりました。


 結局、何故そんなことになったのかはさっぱり分かりませんが、その後亡くなった先生の墓に線香を供えておきました。それから不思議なことは起きなかったんですがね、あの時のことは未だに説明がつかないんですよね。夢のお告げくらいにしか思えないんです。


 そう言って彼は話を締めくくった。今では都内で働いている彼だが、お盆に帰省したときは実家の墓のついでにその教師のお墓へ線香を一本立てることは欠かしていないそうだ。

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