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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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カメラと仏像

 まだスマホの無かった頃、カメラがケータイに搭載されて今に至るが、フィルムカメラがほとんど無くなって心霊写真というものはとんと減ってしまったが、今野さんはスマホのカメラで不思議な体験をしたと言う。


「あれは……まだまだスマホが未成熟だった頃の話です。と言ってもそんなにスマホの歴史が長いわけでもないので古い話ではないのですが、アレは未だに説明がつかないんですよね」


 当時、まだSNSにアップロードする人が少なかった頃に彼女はもう写真をアップロードしていたらしい。今のように料理の写真を撮ったりなどではなく、風景写真を撮影していたそうだ。


 暇つぶしに散歩をしていたんですよ。散歩と言っても自然の中を歩いているのでそれなりに撮影するものはありました。まだ田舎の方に住んでいましたからね。


 そうして林道に見まごう道の脇を撮影しながら散策をしていた。するとなんとも奇妙な木があったと言う。


「おかしいんですよ、アレを木と呼んでいいのでしょうか? いえ、木には違いないんですが、まだ枯れてもいない木に仏像が彫られていたんですよ。不思議でしょう? 誰が掘ったのかは分かりませんが、木の側面に直接仏様の像が彫られていたんです。木に直接彫るような技法があるんですかね? 私はさっぱり知りませんが、珍しいものだったので写真に残しておこうと思ったんです」


 そうしてスマホのカメラを向ける。まだ単眼のレンズで、カメラ性能を売っていたわけではないので画面に映る映像は荒いものだった。しかしそれでも一つだけ明らかにおかしいことがあった。


「その仏様なんですけどね、スマホの画面の中では顔が怒りに歪んでいるんです。憤怒の表情と言えばいいのでしょうか? とにかく撮影されるのを心底嫌っている様子でした。それでおかしいな? と思いその仏像に目をやると、やはり仏様の温和な表情を浮かべているんです。それでカメラの画質が荒いせいかな? と思って近寄ってからもう一度カメラを向けたんです」


 やはりその仏様は怒りを隠さない表情で映っていたという。カメラに写る映像と、実際に目で見ているものがまったく別物だった。不気味に思い、彼女はその場を離れることにした。地面がアスファルトになってからようやく人心地ついてあれはなんだったのかと思いを巡らせたが、結局答えは出なかった。


「それから機種変更してカメラが単眼から二眼になったんですよ。カメラ性能も上がったし、あの仏像の写真を今度こそ撮りに言ってみようかなと思いました。私はこれでも負けず嫌いなんです」


 そうして再び同じ道を歩いて行ったのだが、その木に彫ってあった仏様はとうとう見つけることが出来なかった。誰が掘ったのかも、何故掘ったのかも不明で、消えた理由も説明がつかないのだが、同じ道を通っているのは間違いないはずなのにすっかり消えていたという。


「結局、真相は分かりません。ただ、神仏は写真に撮られるのが嫌いなのかなと、なんとなくそう思うできごとでした」

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