表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本怪奇譚集  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/331

謎の建築物

 伊藤さんはゲーマーだ。一見心霊などありそうにないが、彼は少し前に怖い目に遭いそのゲームを辞めてしまったらしい、その事を話してもらった。


 ゲームとかご存じですかね? その時やっていたのはブロックを削り出してそれを組み上げるゲームだったんです。自由度も高いし有名で結構人気が高いんですよ。


 私はそのゲームに知識がなかったので軽く説明を受けた。どうやらモンスターをどんどん倒していくこともできなくは無いが、醍醐味は建築らしい。フィールドで掘ったり切ったりした素材を並べて建物などを組んで行くのが楽しいそうだ。オンラインにも対応しているそうなのだが、彼は多人数を招くのを嫌って一人で遊んでいたそうだ。


「それで、始めにおかしいなと思った理由はゲームを起動させるとスタート地点の近くに何かあるのが映ったんですよ」


 それを見て、彼はなんとなくそちらに向かったらしい。基本的に建築はプレイヤーくらいしか出来ないので自然に出来るとは思えなかった。


 そこにあったものなんですが……石がいくらか積んであったんですよ。持ち物を覗いてみると石が多少減っていたんですよ。知らないうちに建てたのかなとも思ったのですが、昨日は酒を飲んだわけでもないですし、記憶に無いものを作るとは思えなかったんです。不思議には思いましたが、実際それで何が困るかと言えば何も困らないのでその建築物を放置してその日はそのまま遊んだんです。


 それで一日遊んで寝たんですよ。そうしたら夜中にスマホの着信音でたたき起こされました。寝ぼけながらも通話をはじめると母からでした。用件は『あんた! いとこの花ちゃんが事故に遭ったからすぐに帰ってきなさい!』と言うものでした。花ちゃんは花子という名前で小さい頃は一緒に遊んでいたのですが、最近すっかり顔もあわせていなかったんですよ。


 それで大急ぎで一通りの準備をして特急に揺られながら実家まで帰ったんです。そうして昔の名残を残す遺影を見ながら、昔のままの笑顔を見て少し胸が痛みました。


 そうして一通りの法要が終わった後で再びアパートに帰ったんです。疲れ切ってその日は寝ましたが、翌日にはいつも通りの生活に戻りました。冷たいのかもしれませんが頻繁に会っていたわけでもないので一晩寝るといつも通りの生活に戻りました。


 それでいつも通り仕事から帰ってくるとゲームを起動したんです。するとこの前作られていた石の塔が消えていたんです。何故かはよく分かりませんでしたが、作った覚えの無いものだったのでそれが消えても何も困りませんでした。気のせいかバグだったのだろうと思ってその日は敵を倒したり探索をしたりして時間を潰しました。そうして一週間くらい普通に過ごしていました。


 異変が起きたのはそれから一週間後、ゲームを起動するとまた石の塔が建築されていたんです。もちろん作ったような覚えはありませんよ。それなのに何故かそれは再び現れたんです。最近で来たバグか何かだと思い放置することにしたんですよ。


 ただ、その三日後、父が脳出血で倒れたと電話がかかってきました。それから先はあっけなく逝ってしまいました。


 こうも続けて忌引きを取ると上司からも嫌味を少し言われましたが、このご時世忌引きをさせないなんて出来るはずもないので少しの居心地の悪さを持ったものの、開き直って実家に帰りました。


 それからは忙しかったです。いとこの時とは比べものにならないほど忙しかったのですが、なんとかやるべき事をこなして帰宅しました。


 それからふと気になってゲームを起動しました。なんとなく確信めいたものがあったんです。起動して始めるとスタート地点に見えていた石の建築物はなくなっていました。なんの理論もないのですが、この現象が無関係とは思えませんでした。


 その三日後でした、またゲームの中に石の塔が建築されていました。出来ることは多くありませんが、手持ちのアイテムでその塔を今度は破壊しました。それで解決するのかは分かりませんでしたが、不気味なものを残しておくのが気持ち悪かったんですよ。


 それから今のところ、親族に亡くなった方はいないらしい。彼は最後に、『アレは今にして思うとお墓だったのではないかと思うんです』と言った。それからそのゲームをまだプレイしているんですかと訊いたところ、彼は静かに首を振ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ