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謎のお守り

 斉藤さんは海外通販が趣味だという。怪しい商品を大陸から取り寄せて怖いもの見たさを楽しんでいるそうだ。しかし彼は最近それをやっていて怖い目に遭ったそうだ。話していただけるそうなので是非ともお話を聞かせていただいた。


「いかにも怪しいサイトってあるじゃないですか、日本の怪しさとは数段違うんですよね。でもそれが面白いと言いますか、鬼が出るか蛇が出るか的な楽しみをしていたんですよ」


 別に通販に怪しさは求めていないと思うのだが、そういった海千山千の界隈を楽しむのが好きという人はいるのだろう。


 それで、怪しい商品群の中でも怪しい商品を買うために通販サイトを巡っていたんですよね。値段の高いものは買いませんよ、いくら運営が怪しいと言ってもそれなりの値段のものは大抵しっかりしていますからね。


 何を見たんですか?


 私がそう訊くと、重々しく口を開いた。


 ものとしてはアクセサリなんですよ。いや、どちらかというとお守りに近いのかも知れませんね、とにかくなんだか分からないフォントで印刷されたお守り袋みたいなものが売っていたんですよ。私はパワーストーンみたいな怪しげなものは買わないんですがね、なんだか怪しいサイトに怪しいものが売っているということで、値段の安さも相まって金を捨てる感覚でそれを購入したんですよ。


 念のため支払いは専用のプリペイドカードでしましたよ。流石にこんな怪しげなものを売っているところにクレジットカード情報を渡したくはないですから。


 怪しげなサイト専用のカードですよ、そう言って斉藤さんは笑った。しかし恐ろしい思いをしたのはその後だった。


 届くのは一週間くらいかかりましたかね、大陸から発送しているにしては早い方ですね。国内通販になれていると信じられないくらい遅いですけど、海を渡ってくるなら早い方でした。


 それでは無事商品が届いたと?


 いや、まあ届いたのには違いないんですがね、サイズ感が思ったより大きかったんですよ。写真に比較対象が載っていなかったので手のひらに軽く収まるものだろうと思っていたんですがね、届いてみると手のひらくらいのサイズがありましたね、握れるようなサイズではなかったです。そう言ったところも楽しむのが通販の醍醐味ではあるんですが……


 そこで一呼吸置いて斉藤さんは言葉を続けた。


 とりあえずカバンに入れて持ち歩いてみたんですよ。効果があるなんてこれっぽっちも思っちゃいませんがね、アクセサリー感覚でカバンに入れてみたんです。


 そうしたら酷いものでした、出勤中に雨には降られるし、何もないところで躓くし、しまいには食あたりまで起こしましてね、三日ほど会社を休む羽目になりましたよ。


 当然そのお守りを手に入れてからそういったことが重なったので、お守りの中身を見てみようと思ったんです。これがなんであれ手放す前に中身を見ておこうと思いまして。


 そうして開けたんですがね、中に入っていたのは紙に包まれた茶色い紐みたいなものが一本入っているだけでした。呪物にしたって粗末なものだと思ったんですが、それが何なのか少し興味が湧いたので、それを机に置いてスマホのカメラを向けて画像で検索をしたんです。


 最近は検索も高機能化しているので検索するとあっという間に大量のデータが出てきました。出てはきたんですがね……


「結局、それが何かは分からなかったんですか?」


「いえ、分かりましたよ」


 そう言ってから重い口調になってその正体を話してもらった。


「へその緒、というのが検索結果でしたね。大量の参考画像が出てきて、ああ、そういうものなんだな……と妙に納得しましたよ」


 結局、へその緒はお守りの袋ごとまとめて燃えるゴミに出しました。何故あんなものを売っていたのかは不明ですがね、知りたいとも思いませんよ。


「それで落ち着いたわけですか」


 私がそう聞くと彼は首を振って答えた。


「絶対に個人が特定されないようにしてくださいね。お願いしますよ」


 私がもちろん誰が取材対象だったかなどバラすつもりはないというと、彼は懺悔するように言う。


「実は親戚の一人が妊娠中だったのですが、流産しましてね。それがお守りを捨てた日とピタリと一致するんですよね。その事を親から聞いて以来、その親戚が来るようなお盆とか年末には実家に近寄らないようにしています。どんな顔をして会えばいいか分からないんですよね」


 そう言ってこのお話を締めてくれた。結局、最後までそのへその緒がどういった経緯で出品されていたかは不明だが、もう知りたくもないし、関わりたくもないということで斉藤さんは国内ですら出来るだけ通販は使わず実店舗に足を向けるようになったと言う。不便だとしてもそれなら自分一人の問題で終わるから通販は二度と使いたくないそうだ。

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