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お盆と犬

 佐渡さんは最近、奇妙なことがあったと言う。その事について聞いた。


「いやね、僕もおかしいとは思っているんですよ。でも実際にあんなことがあるとね……やっぱり……」


 それから最近佐渡さんに起きている奇妙なできごとを語り始めた。


「始まりは……そうですね、半年くらい前だったでしょうか。実家に帰省したときなんですが、家を出たみんながお盆ということでやって来ていました。そのせいで泊まる場所が足りなかったんです。なので僕は仏間をあてがわれたんです。兄たちは結婚しているので仏間に泊まらせると悪印象を与えるというのもあったのだとは思います」


 その晩、初めて奇妙なことが起きたと言う。


 夕食までは普通に終わったんです、個人に思いを馳せてやれ『アイツは最後まで碌でもなかった』だの『アイツの遺産相続は揉めた』だのと言った、要するにまあ、故人たちへの悪口ですね。死んだ人だから何を言ってもいいというわけではないと思うんですがね、仏間に寝る僕のみにもなってくれと思ったんです。


 よりにもよってお盆という故人が帰ってくる時期にその相手の陰口をたたくのは、他人事だから言えるんだろうなと思いました。結局、言っていた人たちはホテルを取っていたり、リビングで寝たりするわけですからね。


 そうして不安のまま、宴会も終わったのでそれぞれ宿泊場所に別れたそうだ。


 不気味な感じはするんですが仏間しか開いてない以上仏壇の前で寝ることになりました。仏壇にはしっかり位牌が置いてあり、その上遺影までそこそこ置かれているんです。いくら生前お世話になった人たちとはいえ、申し訳ないですが怖かったですね。


 とやかく言っても仕方ないですし、寝ることにしましたよ。幸い寝室代わりに使用しただけなので、翌朝起きればあとは帰るだけとなっていたんですよ。なので渋々寝たんですね。


 それが間違いだったと彼は悲しそうに言う。


 一応、仏壇に足を向けるのもどうかと思い仏壇に頭を向けて寝たんです。別に神や仏を信じているわけでもないですが、気分的な問題ですね。ほら、なんとなく大丈夫と分かっていても事故物件とか住むのに抵抗があるでしょう? それと同じようなものです。


 そして部屋を暗くして寝たんですよ。宴会をやっていたあとなので酒も入っており、すぐに眠気は来ました。そして意識が落ちたんです。その後深夜になって目が覚めたんです。


 目が覚めたと言ってもまったく体は動きません、ああ、これが金縛りなんだなと初めてのことで少し混乱しましたが、金縛りであることは分かったので、すぐに寝るか体が動くまで待とうと目を瞑って待ったんです。


 何も見ていないのですが、頭の両側に何か冷たいものが当たった感覚があったんです。そこで初めて怖くなったんです。必死に目を閉じて何があるのかを見ないように必死になりました。


 そこで『バウッ!』という泣き声がしたかと思うと頭を掴んでいた何かが離れたんです。たったそれだけの体験なんですがね、私には十分怖いものでした。


 翌日、部屋を見ると犬の毛が散っていたんです。昔飼っていた犬が真っ黒でつやつやした毛をしていたので多分アイツに助けられたんでしょうね。それだけあって帰省は終わったんです、しかしいつものアパートに帰ろうと新幹線に乗っているときにメッセージが届いたんですよ。それには『あんた、仏壇に何かしたの?』という母親からのメッセージでした。『開けてもいないけど?』と返信すると、帰宅後に『位牌が全部割れてるんだけどホントに何もしてないの?』というメッセージが画像付きで届きました。そこには綺麗に待つってある位牌が全て写っていました。


「なんだか怖くなって今年のお盆はどうしようかと悩んでいるんですよねえ……」


 そう言って佐渡さんとは別れた。その夏以来、佐渡さんとは連絡が取れなくなっているが、彼が無事でいることを願うばかりである。

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