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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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橋の子供

 Nさんの住んでいた町には古い橋があったらしい。それもただ古いだけではなく、言い伝えによると明治になって作られたというのに人柱が使われたともっぱらの噂だった。


 江戸以前なら『そういう迷信もあるかもね』と片付けられる話だが、近代の法律が制定された時代にそんな行為が行われたというのはなんとも恐ろしい。


「ちょっとその橋で怖い目に遭いまして、話を聞いてもらえると助かります。ああ、地元がバレないようにしてくださいね」


 Nさんはそう言ってから、橋にまつわる話をしてくれた。


 あれは……中学生だった頃ですね。通学路にあの橋があったんですよ。みんな気にせず通っていたんですが、どうにも不気味でかないませんでしたよ。


 ある日、部活で遅くなった日にその橋を通ったんです。子供の笑い声が下から聞こえてきて、『遊んでるのか、いいなあ』と考えて橋から少し離れて気がついたんですよ。その日は部活がかなり遅くなって日が落ちてから帰ることになったんです。そんな時間に子供が川で遊んでいるはずが無いでしょう? 怖くなってそこから足早に帰ったんです。


 誰かに話そうとは思ったんですが、こんな不謹慎な話をしても向こうもいい気はしないでしょうし、信じてもらえるかも分からないので胸の内にしまっておくことにしたんです。


 問題は学校に行くのにその橋を通らないと大回りになるって事なんですよ。川を挟んでいるので、その橋を使わないルートだとかなり遠くまで行かないと橋が無いんですよ。


 怖いんだけどそこを通らないわけにもいかないので渡るときは駆け足で逃げるように渡っていました。


 あれは……七月のことでしたね。その日も部活で遅くなってから帰っていたんです。まだ日がある頃だったので大丈夫だろうとクタクタになった身体を引きずりながらゆっくりと歩いていたんです。


 その日は橋の上で鳴き声が聞こえたんです。周囲を見ましたが子供なんて当然いないんです。欄干から下を覗く勇気も無く、一目散に逃げたんですよ。


 いい加減その橋を使うのを辞めようかと本気で思っていたときです。天気予報を確認すると台風が近づいていると言っていました。大して気にしていなかったのですが、地元には珍しく次の日に台風が直撃したんです。


 川は大きく増水して風が強く吹き、その日は臨時休校になったんですよ。その時の豪雨は全国ニュースになる程だったんですが、それとは違いあの橋が落ちたことは報道なんてされませんでした。古い橋が落ちたなんてニュースとして価値がないんでしょうか?


 そんなわけで中学時代はそれ以降遠まわりをすることになったんですが、内心少しホッとしました。多分その橋を使わない理由が出来たからだと思います。


 それから別の橋を使って渡っていたんですが、不便でも、あの声は二度と聞こえませんでした。


「これが私の体験なんですけど、少しは参考になりましたか?」


「はい、貴重な話をありがとうございます」


 そこで彼女と別れた。それは大きな水害の起きたときの話だったそうだ。彼女によると、何故かその橋は再建しようという声がどこからも聞こえてこないらしい。

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