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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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幽霊の思想信条

「うちね、神棚があるんですよ」


 そう話すのはRさん、なんでも神棚を巡って奇妙な事があるらしいと聞いた。


「はじめはね、なんの神様なんかなって思いながら一応は時々お菓子を供えながら祀ってたんすよ」


 彼は一見今風の人に見えるが、案外信心というものがあるのだろうか?


「そうですか、神棚も粗末には出来ませんしね」


「ああいや、そう言った話しちゃうんだわ。ある日パチンコで買ってな、端数がお菓子になったんやけどそんな食う気もしないし神様に供えとけって思うただけなんすよ」


 案外続っぽい理由だった。しかしそれから怪談に繋がるのだろうか?


「それでです、次の日も軍資金持ってパチに行ったんすよ。そしたらそこそこ勝てましてな、それで家に帰って気づいたんすよ。神棚に供えていた駄菓子がいくつか封を開けられているんすよ。手に取ってみると中身が空っぽになってましてな、これは神様の御利益やいうことでパチンコに行くときは何か供えるようにしたんすわ」


 それからいくら勝っただのと言ったパチンコの収支を彼から聞かされた、こちらとしては興味の無い情報なのでスルーしておいたが、彼が一応神様を信じていることだけは伝わった。


「で、御神酒って言うんですかな? 酒を供えるといいって聞いたんすけど、ほら、大学に入ったばっかでね、時代が時代なので酒も買えないんすよ。親の世代には酒のお使いが普通にあった言うんですから厳しい社会ですわ」


「ええっと……ではそれで一体何が起きたのでしょうか?」


「ああ、それでコークを供えるようにしましてな、赤と白のラベル付きのあれですわ。俺が好みのヤツってだけですがね。それでパチンコに行ったんですが、まあ酷いのなんの、万札を二枚飲まれましたわ。で、帰宅したんすけど、神棚のコークを入れていたコップに真っ黒に染まって空っぽになってるんすよ。なんていうかな……色素だけ残して中身を空っぽにした感じですからね。そうなってて洗うのに難儀したんすよ」


「神様に供えるならお酒でないとダメとかですか?」


「いや、次の日に試しに青いラベルのコークをペットボトルで供えたら千円入れただけで結構な金額勝てたんすよ。帰ったらペットボトルが未開封のまま中身だけ空っぽになってたんで、神様にも好み言うんがあるんやなって思ったんすわ」


 神様の好みか……難しい話だろう。しかし御神酒代わりにコークとは、結構緩い神様なのかもしれない。


「ただね、どうにもならない飲み物ってのもあるんですよ」


「神様が嫌いということですか?」


「せや、ダイエット系だけはあかんねん。安いからって特売のダイエットコークを供えたことがあるんすよ。万札を飲まれて疲れ切って帰ると神棚の上でペットボトルが破裂し取ったんですわ。あれは酷い状況やったな。かないませんわな」


 なるほど、神様も好みというのがあるのだろう。


「実はこうして怪談を教えたらお金があんたから貰える言うて聞きましてな、今日は二十歳の誕生日なんでそのお金で酒を買って帰ろう思うとるんです」


 こうして彼の怪談らしきものは終わった。私は一升瓶が一本買えるくらいの金額を彼に渡して別れた。その後、神様が彼の買った酒を気に入ったのかは不明だ。

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