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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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誰だったの?

 Rさんの地元には村の人が入らない山があった。その山で不思議な体験をしたらしいので話を伺った。


「いやあ……あれは未だになんだったのか分からないんですよ」


 そう語るRさんが小学校の高学年になったときの話らしい。


「まだ市町村合併がされていない頃の話です。今じゃ地元も市になったらしいですね、まあとにかくそう言った小さな範囲での話なんです」


 小学校と言いましたが、学年に十人もいないような小さな学校だったんですよ。あの村では一つの山には入ってはならないという暗黙の了解があったんですよ。


 別に禁止されていたわけではないんです。ただ誰も入ろうとしないだけなんです、曰くとかも聞いたことがないんです。じゃあなんで誰も入らないのかと子供心に思ったんですよ。


 そこでクラスメイトに声をかけて五人ほど集まったんです。あの山を妙に思っている連中が案外いるもんだなと思いました。『何があるか見てこようぜ』という話になったのも当然ですね。


 人数を揃えて山に入ることにしたんですよ。自然の中で遊んでいたような子供ですから、山に入るくらい別に躊躇わなかったんですよ。ただ、なんとなくあの山に入る気がしなかっただけなんです。どうして理由もないのに遊び場になりそうなところで遊ぼうとしなかったのかは分からなかったんですけど、いよいよ入るぞと意気揚々と山に向かったんです。


「え? なにが起きたかですか? そうですね、起きたと言えば起きたんですが、なにが起きたかは説明がし辛いんですよね」


 自分を入れて六人が山に入ることにしたんですが、山の中は獣道がしっかりあったのでありがたくそれを使って進んで行ったんです。帰るのも簡単ですしね。小さな山だったのであっという間に頂上に到達しましたよ。『別になんも無かったな』とか『噂なんてそんなもんだろ』なんて言っていたんです。


 そこで俺が『よーし、人数そろってるな? じゃあ後は帰るだけだぞ」


 そう言ったときに誰かが言ったんです。


「あれ? 俺たちって六人で入った来なかったっけ?」


 全員がなにを言ってるんだコイツはなんて目でそちらを見ました。それから周囲を見ると自分たちの人数を数えると七人いるんですよ。ただ、不思議なことに全員の顔と名前が一致して、昔からの付き合いの連中だとしか認識出来なくなったんです。


「誰か増えたっけ?」


「いや、全員知ってるぞ」


「計算あわなくね?」


「自分を数に入れてるか?」


 などなど皆疑問を呈したんですが、全員クラスメイトだとしか思えなかったんです。


「と……とにかく降りようぜ」


 そして皆で山を降りました。山から出た頃には六人に戻っていました。ただ……誰が増えて、減ったのか、誰も説明出来なかったんです。結局真相は闇の中なんですが、なんとなくその場の全員がその山に登る人がいない理由を理解していました。


 え? 誰が増えたかって? うーん……それが山を降りてから顔が思い出せないんですよ、何を着ていたかとか、名前まで覚えていたはずなのに下山した頃にはすっかり忘れてしまっていたんです。だから謎のままなんですよ。


 結局、Rさんたちに何があったのかは分からない。ただ、それ以来、地元に残った人たちは、はっきり『あの山で遊ぶなよ』と自分の子供に教えているらしい。

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