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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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tellが来た

 Pさんは昔MMORPGにのめり込んでいた。レアモンスターの討伐のため二三日徹夜でポップするのを待つのも珍しくなかった。そのくらいやる気があったのだが、彼はサービス終了もしていないのにゲームを辞めてしまった。その理由があるそうだ。


「幽霊……とは少し違うかもしれないんですけど、不気味な話なんですよ」


 PさんがリーダーのLさんとヒーラー二人にアタッカー三人とタンク二人で集まり、レアモンスターのポップを待っていたときのことだという。


 数日に一匹ペースでポップするモンスターの出現フィールドで張ってたんですよ。まわりも廃人と読んでいいようなネトゲガチ勢で集まっていました。そのレアモンスターを狙っていたんですよ。そのゲームでははじめに攻撃をしたパーティがモンスターの占有権を得るんです。そのせいで……


 ちょうどその時ドラゴンがポップしたんです。皆一斉に我先にと群がっていきました。俺たちのパーティが真っ先に攻撃を当てたんです。それで占有権を得たので後は倒すだけのはずだったんですが……


 その時DPS……アタッカーって言った方が分かりやすいですかね? ソイツが近くにいたそこそこ強いゴブリンの変異種に魔法を飛ばしちゃったんですよ。全員レベルカンストしていましたが、それでも負けるときはよくあるドラゴン相手なので、いくら格下と言ってもゴブリン一匹増えるととても勝てたものじゃないんです。当然ですが、ゴブリンを何とか排除しようとしてその間にドラゴンのブレスで全員やられました。


 まあ……そんなことがあったら当然ですけど反省会になりますよね。反省会なんて言いますけど結局は吊るし上げですよ。間違えて攻撃したDPSをLが詰ったんです。それを皮切りに全員がソイツを責め始めました。はじめは言い訳をしていたのですが、パーティー全員からの吊るし上げでろくにチャットも出来ずギルドから脱退してそのまま落ちたんです。


 それでその日は終わったんです、ドラゴンは無事他のパーティが討伐したので、次に出現するのは最低二日後です。その時に集まる予定を立てて全員別れました。


 二日後のことです。つるし上げられたヤツを呼ばずにギルドから慣れているDPSを呼んでパーティを組み、ポップを待っていました。そんな時にLがパーティチャットに一言『悪い、tell来たからちょっと黙るわ』と言って誰かからの個通に応じていました。まだ音声チャットのない時代です、こちらへは何を言っていたかも分かりません。ただ、Lがパーティチャットに戻ると『あ……悪い……』とだけ言ってパーティを解散したんです。何があったのか聞こうとギルドチャットを流そうとしたら『ギルドが解散されています』と出たんです。


 Lにtellを送ろうとしたんですが、もうログアウトしていました。Lが一体誰から連絡を受けたのかは知りませんが、何かはあったのだと思っています。それ以降ギルドに入っていた人で、覚えている人にtellを送ろうとしましたが、全員から無反応でした。だからなんとなくそのままネトゲから離れたんです。


 別にそれで不便があったわけではないんですけど……なんだが不気味だったんですよ。


 彼の話はそれだけだ。分かっていることは少ないし、決定的なことがあったわけでもない。ただ、追い出された人が出たタイミングとあまりに近く、彼はアイツが何かしたのではないかと未だに思っているらしい。


「幸いなのはネトゲのアカウントしか知られていなかったってことでしょうか。あの頃にゲーム外チャットツールを使っていて、アカウントを知られていたらと思うとゾッとしますよ」そう彼は語る。

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