表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本怪奇譚集  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

316/331

人通りの少ない道

 お話を聞いたユースケさんの腕には傷跡がある。彼によると、その怪我の原因は幽霊らしい。怪我をしたユースケさんには申し訳ないが、興味をそそられる話だったので是非にと聞かせてもらった。


「使われない道っていうのは使われないだけの理由があるんですねえ……」


 そう語る彼は目がうつろだった。どうやら余程のことらしいと思われる。以下は彼の語ったことだ。


 この傷がついたのは帰宅中です。あの時は健康に気をつかって電車を使わず自転車で通勤していたんです。今から思えばですけど、健康のためにこんな怪我してちゃ世話ないですよね。


 自転車で転ぶのなんて珍しくもないんですけど、転んだ状況が異常だったんですよ。


 あれは夕焼けを少し過ぎて薄暗がりが広がってきた頃でした。帰宅途中に暗くなってきたせいで急いでいたんです。そのせいで普段使わない人通りの少ない道を選んで走っていたんですよ。ここに引っ越してきてからこの道をろくに使われていないのは知っていたんですよ。ただ、何故使われていないのかは知らなかったんです。


 その脇道に入って自転車を走らせた。道の脇には藪がありましたが手入れはされているようです。ただ、何故かその道には脇の家の出入り口が一つもなかったんですよ。まるでここに関わりたくない様子でした。


 ただ、両脇に家の門が無く、人通りはほぼ無いので結構な速度が出せたんですよ。それで自転車を全力でこいでいるとライトはつけていたはずなのに何かに乗り上げて転んだんです。それがこの傷です。


 問題はなにを踏んでしまったかで、引っかかった方に顔を向けたんです。そうしたら目があったんです、倒れている鎧武者でした。ヒィッと声にならない呼吸をして急いで逃げ出したんです。その日はもう暗かったので病院は翌日に回したんですよ。


 次の日、病院に行ったのですが、そこで医師に自転車で転んだと話すと真っ先に「○○のところですか?」と聞かれたんですよ。『どうして分かるんですか!?』と思わず口をついていました。


 その医師は『あの当たりは怪我人が多いんですよ』と言い、今後はあそこを通らない法要にしてくださいと言われ、釈然としないまま消毒をしてもらい抗生剤を処方してもらって帰ったんです。


 不思議に思ったのであの道になにかあったのか調べてみたんです。すると『最近は』曰く付きなことが起きていなかったんです。問題はそれよりずっと前の話で、そこが刑場だったと図書館で地元を調べたときに分かったんです。ただ、刑場って鎧を着ているような場所でしたっけ? それがどうしても疑問なんですよ。ただ、あそこは二度と通ることはないでしょうね。個人的にはあの地が人間の血を吸いたがっているんじゃないかと思っています。


 そう語ってユースケさんは話を終えた。そこを通らなければ害は無いし、困ったことと言えば傷跡がかゆくなっていることくらいだと彼は語った。世の中の怪談に真相が分からないことは多いのだが、とにかく刑場後だったと言う事実だけに注目しているらしい。


 なお、彼は怪我が治っても自転車通勤を再開するつもりは毛頭ないと言っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ