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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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心霊写真とメタデータ

 サイトウさんは写真を取るのが趣味だ。このご時世でも心霊写真というものは撮れるらしいが、たいていの場合公にされないので見なくなったと言うだけだ。昨今の心霊番組の現象を考えれば致し方ない。


 そんな説明を受けてからサイトウさんに話を伺った。


「コレも心霊写真なんですけど……SNSにアップロード出来ないんですよ。だからこうしてわざわざ会ってもらっているんです」


 彼女はそんな言葉を言ってからカバンからミラーレス一眼カメラを取り出した。それを起動して私の方に液晶を向けた。


「ほら、ここに顔が写っているでしょう?」


 そう言われて小さな画面をよく見ると、確かに顔に見えなくもないものが写っていた。心霊写真としては弱いような気がするが、顔と言われれば顔っぽく見えてくるので一応心霊写真なのかもしれない。


「確かに顔のように見えなくもないですが、人間は三個の穴があると顔に見えてくると言いますし、それとはまた違うのですか?」


 そう訊ねると彼女は頷いた。


「確かにそうですね、この写真はそうなのかもしれないんですが、問題はこの写真が心霊写真なのかフォロワーの皆に判断してもらおうと思ってSNSにあげたときに起きたんです。写真を見た人全員が顔なんて写っていないというんです。全員が同じ意見なんておかしいと思ったのですが……」


 深呼吸してから彼女は話を続ける。


「おかしいなと思ってアカウントを開いて、自分の書き込みを表示したんです。アップロードされている写真にはその顔がまったく写っていないんです。色々試したんですが、写真に加工をするとその顔のような物は消えてしまうようです」


「なるほど、他のメディアにコピーすると消えてしまうというわけですか」


 私の言葉にサイトウさんは複雑そうな表情をする。


「色々試したんですが、写真にはメタデータって言うものがあるんです。いつどこで写真を取ったかの情報が入っているデータが写真にくっついているんです。それで実験したところ、そのままのコピーはセーフで、SNSへのアップロードのような自動でメタデータが削除される変換をすると消えてしまうようなんです」


「幽霊はメタデータだと仰りたいんですか?」


「分かりません。ただ、その心霊写真は変換してしまうと消えるようなんですよ。コレを見てもらえますか」


 そう言って差し出されたスマホには、彼女のアカウントが表示されていた。トップに固定されていたのは見せてもらった写真なのだが、そこからは綺麗さっぱり顔のようなものは消えていた。


「確かに消えていますね……」


 私はいろいろな可能性を考えていたが、彼女によると心霊写真は無加工でないと取れないのではないかという話だ。SNSへアップロードする際はほぼ必ず変換が入るのでその段階で消えてしまう幽霊の話を聞かせていただいたのだった。

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