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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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人を助ける道祖神

 Kさんは、眠い目を擦りながら夜道で車を走らせていた。別に走り屋というわけではない、ただ深夜までのデスマーチで疲れたので一刻も早く寝たかっただけだ。


 はやる気持ちを頑張って抑えて、制限速度ギリギリで車を進める。幸い対向車はいないのでハイビームで見通しがよかった。そんな道路なのでついついアクセルを踏み込む足に力が入る。それに気づいてアクセルを緩めることを繰り返していた。


 そんな時、道路の先を見ながら走っていたので気づくのが遅れた。車が何か動物のような物に乗り上げた衝撃が来た。一刻も早く眠りたかったはずなのに、何かを轢いたと思うと意識がハッキリして『マズいな』と冷静になりつつ、人でないことを祈りながら車から降りた。


 しかし血痕のような物は一切ない。動物だって血は出るだろう、それなのに一切血も肉も見当たらない。気のせいだったかと思ったのだが、車のバンパーに付いた傷が確かに何かにぶつかったことを示している。


 試しに車の下を覗いてみると、何かが挟まっている。取り出そうとしたのだが、ガッツリ噛んでいたので、車を少しバックさせてそれを車の下から引き出した。


 そして車を降りてその物体をスマホのライトで照らすと、木製の道祖神がボロボロの状態で転がっていた。罰当たりなことをしたなと思いつつ、そっと道路の脇に置いて帰路を急いだ。本当は警察なりなんなりに連絡するべきなのだろうが、道祖神の所有者など知らないし、ハッキリ言えば気にする人も少ないと思い車を走らせた。


 それからしばし走ったところで赤い光が見えた。そして車を止められ、制服を着た人が話しかけてきた。


 その話によると、この先で大きめの事故が起きたらしく、現在ここから迂回してくれとのことだった。


 翌日、ニュースをチェックしていると、自動車の大きな事故が報道されていたのだが、あの道祖神を轢いていなければ巻き込まれたかもしれない時間だった。


 後日、道祖神へのお供えを持ってその道を走ったのだが、その道祖神の祀られていたところはどうしても見つけられなかったそうだ。

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