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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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遅れてきたメッセージ

 Dさんは母親が年を取り、そんな時に携帯電話が壊れたと言われたのでスマホを買いに行った。別に通販で買っても構わないのだが、一応保証対応が違うので母親を連れて携帯を買って帰った。


 手間だったなと思いつつ、そこから先の手間を考えていた。簡単に操作ができるようにパスワードもかけず、ホーム画面の真ん中にDさんへの電話がかかるショートカットを置いて、いつでも電話がかかるようにした。それが帰省をしていたときの話だ。


 当然だがそんな母親にスマホを買ったところで操作は難しいが、無いよりマシだろうということと、こちらからの電話に出られればいいと割り切ってスマホを置いて自宅に帰った。『何かはした、責任は果たした』そんな満足感だけを覚えながら都市部に帰る。


 それからしばらく、母親から電話がかかってくることが何回かあった。ホーム画面にポンと一つだけこちらの番号へのショートカットを置いているので、ついつい押してしまい電話がかかってきただけだった。


 親が年を取ったことは悲しいが、仕方ないだろう。今さらスマホを完璧に使いこなせるようになれという方が無理だ。だから電話がかかってきてもとりあえず出て、要件があるのか聞いて特にないと言われればさっさと電話を切った。


 そんなやりとりが何回か続いた後だった。ある朝、まだ日が昇るかどうかという時間に目が覚めて、スマホで時間を確認しようとした。まだそこまで焦る必要も無い、そう思っていたのだが、スマホには一通のSMSが届いていた。送信元を見ると母親になっている。電話さえおぼつかないというのにどうやって文字入力をしたのだろう?


 そんなことを不思議に思いながらメッセージを開いた。そこには『お世話になりました』とだけ書かれていた。最悪の事態を考え、すぐに実家に電話をした。すると姉のすすり泣く声が聞こえて、母が昨晩息を引き取ったことを教えられた。突然のことに二の句が継げなかったが、どうやら心不全であると言うことだけは教えてもらえたそうだ。


「とまあ、よくある怪談ですよね?」


 そして最後に一つDさんは言った。


「メッセージの届いた時間が亡くなった翌日なんですよねえ……いくらパスワードがかかっていなかったとはいえ、誰が送信したんでしょうねえ……」


 その言葉に私は回答ができなかった。

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