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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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頭痛と予兆

 Kさんは昔、頭痛に悩んでいたらしい。しかし問題なのは頭痛自体ではないそうだ。それについての話を伺った。


「大した話ではないのですが、私に頭痛があると何か不吉なことが起きるんですよ」


 彼女はそう言って今までの経験を語った。


 はじめは小学生の頃でしたね、突然頭痛がしたかと思うとまともに立っていられないくらいになったんです。その時は体育の時間だったので体調不良で見学しました。そんな時に職員室へ呼び出しがかかったんです。そこで不思議と頭痛は消えたんですよ。


 職員室に恐る恐る入ると、普段は厳しい先生も、少し口ごもってから私に言うんです。その話は祖母の訃報でした。


 お葬式は泣きました。小学生なりになんとなく分かったんでしょう。その時はまだ頭痛との関係は考えませんでした。


 ただ、翌年にも頭痛が襲ってきて、授業中だったので保健室のベッドで寝ていると、先生が入ってきたんです。そして言うのは祖父の訃報でした。流石に何か関係があるのではないかと思ったんですが、数年は頭痛も治まっていたんです。


 次の頭痛は夏休み明けでした。ガンガン痛む頭を抑えながらなんとか席に座っていると、先生が入ってきてクラスメイトが交通事故に遭って入院していると言ったんです。もちろん偶然だとは思うんです。頭痛がしたのは当日で、事故が起きたのはそれより前なんですからね。


 何が酷いって高校受験で本命校の発表日の朝に頭痛がしたんです。見に行くとかそういう問題ではなく、『ああ……落ちたんだ』と分かっちゃうんですよ。まだ結果が公表もされていないのに落ちたことが本能的に分かったんです。


 結果ですか? もちろん落ちていましたよ。受験の手応えは割とよかったのでショックでした。滑り止めの時はまったく頭痛がしなかったんですよ? せめて逆ならよかったのにってどれだけ思ったでしょうかね。


 それで高校に入ったんですよ。そこで私の人生が変わりました。滑り止めだろうが高校に入ればお祝いももらえましたし、毎月のお小遣いも増えたんです。私にも確信があったわけではないのですが、お小遣いを握りしめてドラッグストアに行きました。その頃には医薬品と同じ成分のものをドラッグストアで買えるようになっていたので、一番痛みに効くものはどれか聞いてそれを一箱買ったんです。


 それから毎朝一錠飲むと頭痛は起きなくなりました。しばらくはそれでもったんですし、不思議と頭痛さえなければ何も起きないんですよ。だから安心して飲み続けていたら効きが悪くなってしまいまして……いろいろ渡り歩いたんですが、結局今は個人輸入で合法的な一番強い痛み止めを使っているんです。実はこの話をしたのも謝礼が欲しかったからなんです、個人輸入はお金がかかりますからね。


 それで彼女の話は終わった。至って真剣な顔でそう言うので、おそらく嘘ではないのだろう。怖い話だと思ったが、実際頭痛が起きたから悪いことが起きたのかと言えば関係性は微妙なものだと思う。しかし彼女が平穏に過ごせるならそれでいいかと同時に思い、そっと謝礼を差し出した。

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