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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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302/331

通販サンプル

 Uさんはネット通販を頻繁に利用していた。しかしその中であまりいい思い出にならないこともあるらしい。彼が未だに後悔していることを話してもらった。


「疑わなかった俺も悪いんですけど、やっぱり酷いものだと思いますよ」


 始まりは彼が実家に住んでいた頃、郵便受けを覗いたときから始まる。そこにはUさん宛の小さな段ボール箱が入っていた。また通販の何かだろうと思い、一々何を買ったかなど覚えていないので、自室に戻って段ボールを破いた。マナーはともかく、段ボールが綺麗に空かないのは仕方ない。発送業者が大抵開封のことなど考えていないのだ。


 入っていたのは化粧品のサンプルと某サイトのレビュー依頼だったんです。こういうの時々あるので、またか……と思いながら、何故男の俺に雑に化粧品のサンブルなんて送ってくるのだろうと思いました。中に入っているのは『保湿効果! 令和最新版!』と書かれた小箱に入ったクリームでした。初手から怪しいなって思う商品を平然と送ってくるのにあきれつつ、その小箱から中身を取り出すと、缶に入ったクリームでした。


 使い道がないのでそれをリビングに置いて、家族の誰でも使えるようにしたんです。最低限危険は無いでしょうが、俺には要らないですからね。


 そうして放置をしていると、母親が時々使っている様子でした。姉もいましたがまったく使う気配がありませんでした。まあ商品名からしてお察しなものですからね。多少ネットに触れている姉には、ああアレかと理解したんじゃないでしょうか。もう○○最新版って時点で怪しむのが基本ですからね。


 しばらく経ってから母は『あのクリームいいねえ……どこで買うんだい?』と聞かれたので発送元を教えておいて、「できればやめといた方がいい」とだけ伝えておきました。あの手のものは偏見かもしれませんが本当に良いものであることは少ないですからね。


 それからしばらくして、母宛の小包が届いたんです。段ボールのサイズや持った感じで『あー……買っちゃったか……』と思いました。母の金なので好きにすればいいんですけど、もう少しマシなものを変えたんじゃないかという考えは拭えなかったんですよ。


 届いてすぐに異変は起きました、母が妙に怒りっぽくなったんです。気分が悪いときはできるだけ近寄らないようにしたんですが、それでも時々突っかかってきてどうしたものかと思ったんです。


 それと共に、あのクリームを使い出してからだなと気がついたんです。そこで俺はドラッグストアに行き、安いクリーム剤を買ってきて、母のいない間にそのクリーム缶の中身を洗い流して、買ってきたクリームを詰めたんです。


 それからすぐに母は平穏な雰囲気を取り戻しました。結局アレが何だったのかは分かりませんが不気味ですよねえ……


 そう言って彼は話を終えた。なお、それ以来サンプルが送られてくることはないし、その商品を販売していたサイトは管理者がいなくなったのか、ドメインを横取りされて怪しげなガジェット売るサイトに変貌していた。そのため真相は一切不明だが、彼は買ってきたものを家族に使わせるのを躊躇うことになったそうだ。

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