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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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ガチャが引きたい

 Sさんは最近、覚えの無いクレジットカードの利用履歴があったらしい。不正利用を疑った彼だが、実態はなんとも不気味な物だったらしい。


「明細を見るとスマホのアプリ内決済の履歴が載っていたんです。最近有償のガチャは回していないのでおかしいなと思ったんです」


 とりあえず彼は決済のパスワードとスマホのパスコードも変更した。誰にも見られていないのは確認済みなので、コレで決済されることは無いだろうと思った。


 しかし、翌月になるとやはり三千円前後の決済記録が残っていた。スマホを見ると確かにソシャゲのガチャを回した記録が残っている。しかしSさん自身にはガチャを回した記憶など全く無い、それでもあるときに気がついた。


「最高レアリティのキャラが増えてるんですよ……それも有償ガチャ限定のキャラなんですよ。決済の都合上自分がやっているとしか思えないんですが、最高レアを引いたのにまったく記憶にないのはおかしいと思いました」


 無償ガチャで最低保証が出た程度なら気にもとめないのだが、こうなってくると違和感がある。彼はスマホをスタンドに立て、動体検知モードでカメラアプリを起動して、しばし動かしておいた。


 コレで自分がスマホを弄っているなら写るはずだ。そう考えてしばらく、寝る前にスマホをスタンドにセットする生活をした。ある日、スマホを見ると動画ファイルが一個増えていた。ついにスマホを弄っている様子が撮れたのだろう。そう考えて彼は恐る恐る動画を再生した。


「それで、夢遊病みたいにスマホを弄っていたんですか?」


 私の問いに彼は曖昧に頷いた。


「確かにそうです、ただそれだけならよかったんですけど……どうにもアレは不気味なんですよね」


 彼は動画ファイルを開くと、常夜灯だけの部屋で布団が持ち上がった。やはり自分が起きていたんだなと彼は確信して、夜間にスマホが使えないようにしようかなどと考えていたのだが、予想に反して布団から起きた彼はスマホに向かわなかった。


 ふすまを開け、隣の部屋に入っていく。そこから先、不気味な祈祷をする声が聞こえてきた。


「はじめはまさかと思ったんですけど……どうも自分でも分からないうちにガチャの祈祷をしているようなんですよ。ジョークとして神頼みをするような話は聞きますが、大真面目に仏壇にガチャの祈祷をしているのは初めてですし、よりにもよってそれをやっているのが自分ですよ、不気味ったらないですよ」


 十分くらい祈祷ボイスが聞こえた後、部屋に帰ってきてスマホを手に取るところで録画は終わった、どうやらアプリを終了させたようだ。


「それで、インストールしてあるゲームを調べたんですが、一つのゲームでSSRが一つ増えていたんですよね……ご先祖様ってソシャゲのガチャにまで配慮してくれるんですかね?」


 私はなんとも言えない顔をしていたと思う。いや、不思議なことは不思議なのだが、果たしてこれが怪談なのだろうか?


「まあ……結果が出ているので諦めて放置しています。月に一万円以上はかけないようですからね。一応記憶は無くてもガチャの引きすぎには注意しているんでしょう」


 彼はそう言って軽く笑った。私はこれも一つの時代にそった怪談なのだと思うことにした。

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