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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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似ているV

 今では絵や3Dモデルを人をトレースさせて動かすバーチャルな配信者は珍しいものではない。しかしそんな所謂Vを見ていて説明の出来ない事があったとMさんは話す。『あまり気持ちの良いものじゃねえぞ』と前置きをしてから彼が体験した不思議なことを話してくれた。


 俺も流行に乗って数年前だったかな? 配信者……面倒だな、要するにVをたくさん見ていたんだよ。新人がいれば入ってみるし、バズっていれば駆けつけるようなことをしていたよ。


 確かに楽しんでいたんだがな、まあたくさん見ているといろいろあるわけよ。


 アレは公園のベンチに座ってパック酒を開けながらスマホでVを見てた時のことだよ。なあ、偶然の一致ってどこまであると思う?


 私は思わぬ問いかけに『ゼロではないんじゃないですか? 0なら偶然なんて事は起こらないですし……』


 私の答えに満足したのかMさんはその体験を話した。


 バカみたいに可愛いモデル使ってるVがいたんだよ。当然ライブ配信を見るだろ? スマホの通信量にはまだ余裕があったし公園でスマホを起動して眺めてたんだよ。そうしたらAが来てな、奥さん連れだったよ、ありゃあおれも運が悪かったのかと思うよ。


 スマホを脇に置いて二人に挨拶をしたんだがな、奥さんの方が叫び声を上げて俺のスマホを取り上げたんだよ。俺はポカンとしていたんだが、奥さんだけじゃなくAまで顔色が悪いんだ。ただのゲーム実況で何であんな反応になるのか分かんなかったよ。


 とはいえ、人の好みはそれぞれだからな、奥さんがVに推しを見つけても責められるような事じゃない。だから俺は二人が俺のスマホを覗いているのを見守っていたんだ。


 そうしたら奥さんの方は泣き出すし、Aのヤツは俺に詰め寄るしで突然修羅場になったんだよ。そこは普通の公園だぜ? 目立つったらありゃしない。わけがわからないから理由を説明しろとAに言ったんだよ。そしたらさ……


「お前、娘がモデルの配信者なんて見せてなんのつもりだ!」


 そんなキレ方をするわけよ。俺はアイツの娘の葬儀に参列したんだぜ? まさかそんな言いがかりをつけられるとは思ってなかったんだ。ただな、そう言われるとさっきまで見ていたはずのVの顔が思い出せなくなるんだよ。しまいにはそういやそんな顔をしていたかも……なんて思うんだよ。


「俺はただ単にネットを眺めていただけだ、偶然似ただけだろ」


 と言ったけど、Aのやつ、一応奥さんをなだめて俺に詫びてきたんだがな……ありゃ本心じゃ許してないのが丸わかりだったよ。それでさっきのVを見直そうと思ってスマホを見たんだが、どうやってもさっきまで映していたはずの画面に移らないんだ。配信者の名前も不思議と思い出せないし、背筋に寒気が走ってAに詫びを入れて逃げ帰ったよ。


 それ以来Aと関係が悪くなってな……お互い別に悪意があったわけじゃないことは分かってるんだが……今年は年賀状も来なかったよ。こりゃあもう会わないんじゃねえかなあ……


 そう語るMさんは非常に悲しそうに話を締めた。別れ際に『親友だったのにな……あっさりしたもんだ』と呟いたのが聞こえてしまい、なんとも後味の悪い結果となった。

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