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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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悲しい場所

 これはOくんが高校生の頃の話。彼の通う高校まで自転車で走っていくのだが、その通学路に妙なものを見るようになった。


 はじめは空き地の一区画で人が嗚咽をあげている様子だった。何もないところで号泣している人を見て驚いたのだが、その時彼以外にそこを見て足を止めている人は居なかった。


 だからアレは見えない方が良いものだと判断して無視を決め込むことにした。彼は霊感が少しあったそうだが、あそこまでハッキリ見えてかつ音まで聞こえるのに自分以外見えていないような存在には初めて出会った。


 どうしたものか考えたのだが、空き地で泣いている人がいるなどと誰かに言ってどうにかなるはずもない。見えない人がいるなんて信じてもらえるはずがないので、不気味だったがペダルにかける力を入れて自転車を走らせた。


 それから毎日そこを通ると、時折人が増えていた。何故か全員が泣いたり喚いたりで、幽霊の類いなのだろうが何故あんななんの曰くもないところに霊が集まるのか理解出来なかった。


 幽霊が増えるのはもう仕方ないこととして、彼は通学路を僅かに迂回してそこをやり過ごすことにした。どうせ大した距離ではないし、校門をくぐる頃にはいつもの通学路に戻っている。だから誰にもバレないし、どう考えても幽霊が見えるなどと言うよりは叱られるにしてもマシだろう。


 決めると翌日以降はその場所を通らなくなって幽霊は見なくなった。代わりに朝五分ほど早く起きることになったが、朝の五分が貴重とは言えアレを見るよりマシだと以降目覚まし時計の針を少し戻した。


 一番嫌なのが行事の時だ、嫌でも学校に近く道幅の都合でそこが都合よく、バスなどを使う時は通ることになる。おかげで通学に使わなくなっても二年の途中までそのなく人々を時折見せられた。


「それで、何もないところでどうしてそんなに人が泣いていたんですか?」


 私がそう訊ねるとOさんは微笑みながら答えた。


「生霊だったんでしょう、二年の末にはバブルが完全に弾けたんですよ。理由はまったく分かりませんが、きっと後からその土地で泣く人が見えていたんじゃないかと思います」


 彼が三年に上がった時にはバブルが過去のものになり、土地の価格は暴落した。彼が見たものが生霊だったのか予知のようなものだったかは分からないが、土地神話というものが存在していた頃の話だそうだ。

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