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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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エアコンの怪

 Hさんの家ではエアコンの調子が悪くて苦労していた。べつに冷房や暖房に問題があるわけではない。エアコンをかけると悪臭がするのだ。


 その悪臭は吐き気を催すほどであり、出来る限りエアコンに頼らない生活をしていた。


「とにかく臭かったんですよ、納豆なんて無臭と思えるほどの悪臭でしたよ」


 それで買い替えれば済みそうな物なんですけどね、恥ずかしながらその時は先立つものが無いので買い替えられなかったんですよ。それで我慢できるときは窓を開けたり扇風機で誤魔化したりしていたんです。それから少しして、今度は窓を網戸にして寝ていたら猫の鳴き声が聞こえてくるんですよ。うるさいですし、暑いですし、とても眠れたものじゃなくて仕事中にあくびをして小言を言われたりしたんです。


 もちろんエアコンの洗浄と室外機の様子も見ましたよ。エアコンをかけながら室外機を見てみたんですが、見た目ではどこにも異常がないんですよ。一応室外機に近づきましたがそこに悪臭の元は見当たらないんですよ。


 臭いというのは確かなんですけど原因が分からないので諦めて本格的に暑くなるまで我慢しようと、スーパーに行ってスポーツドリンクを買い込んで冷蔵庫にたっぷり入れて寝る前にそれをがぶ飲みする生活をしたんです。なかなかキツいですよね。


 それで本格的に暑くなる寸前の給料日が見えてきたのでエアコンを買い替えようかと決心したんです。それでネットの情報を見ながら、エアコンの処分費用がいくらくらいか狩るのか調べようとしたんです。そうしたら……


 室外機の上で猫が息を引き取っていたんですよ。昨日にはいなかったのにです。猫っていうのは死期を悟ると居なくなると言いますが、終の場所をうちの室外機の上にしたのかと思って、なんの縁もゆかりもない猫でしたが、その猫を供養したんです。多少のお金が飛んでエアコンを買うのがキツい出費になりました。それで供養が終わって家に帰るとエアコンがよく効いた涼しい部屋になっていたんです。


 悪臭はすっかり消えてエアコンは当然のように冷気を吐き出していました。


 私は不謹慎にも、悪臭の原因があの猫かと思ったんですけど、よく考えても死後数日も経っていないのに室外機から入ってくるほどの悪臭が立つとは思えませんでしたし、猫の鳴き声がしたのもおかしいと思ったんです。


 それで少し考えたんですが、悪臭や鳴き声は寝この悪霊でも居たんじゃないかと思っているんです。そしてあの死んでいた猫と縄張り争いに負けて霊の方が居なくなったんじゃないかと思っています、推測でしかないんですけどね。


 猫の遺体は火葬にして遺骨は庭に埋めました。小さなお墓を作って夏が来ると猫缶を供えているんですよ。そのおかげかもしれないんですが、耐用年数を遙かに超えたはずのエアコンですが何の問題もなく動いているんです。


 その経験から安易な結論を出すより、冷静になった方が良いなと思ったんですよ。


 そう言って彼は微笑む。未だに夏と冬にはそのエアコンが大活躍しているらしい。

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