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残酷な霊山

 Rさんの地元には、地元の人は滅多に登らない霊山がある。知られていないが一部の人によると霊験あらたかなものらしい。


 ただ、地元民にはまた別の一面を持っていると知られているそうだ。


「霊山ってだけでもうインチキ臭い話ですが、まあ聞いてください」


 あの山には神がいるらしく、山頂に祠のような物があるらしい。しかし、地元民は『アレは恐ろしい物だ』と答えるんです。しつこく大人に聞いたことがあるんですよ。そうしたらどうしてその山が怖いのか教えてくれました。


 話によると、山が危険なのではないそうなんです。山は登山道とかもしっかり整備されていて登りやすいし、なにより山の神様の力でわざわざ怪我をしようと思わなければ余程のことでもないと大怪我をすることは無いそうなんです。


 じゃあなにがそんなに怖いのかって話を聞くと『あそこは生贄を所望なさるんだ』と言うんです。でもあの山じゃ死人は出ないんじゃないのかって思い、そう訊ねました。


『あそこはね、登った人に神様が印をつけるの。その印をつけられた人は山を降りてから命を失ったりするのよ。いい? 絶対に観光に来ている人に言っちゃダメよ」


 私はコクコクと頷いてその話はずっと封印していたんです。ただ、それなりに年を重ねるとインターネットで事故の履歴を検索出来るようになって、調べてみたんです。そうすると地元の付近で死亡事故が結構な数起きているんです。それを地図上にピンを立てましたけど、そうすると地元から離れたところで事故を起こしているんです。何故か地元では事故がほぼ無いんですよ。


 流石に不気味になって民間伝承を調べてみたんです。そうすると地元には山に生贄を捧げていた習慣があったらしいんですよ。生贄の代わりに麓の村の安全祈願をしていたそうです。


 一応それを廃止しようという人も居たらしいですが、時代が『科学の時代に迷信を持ち出すな』という圧でそれを許さず、儀式を終えるのに手伝いがなかったらしいんですよ。


 だから昔の人は、生贄を他所から連れてくればいいんじゃないかと思ったらしく、その山の登山道を整備して、いかにも古そうで歴史を感じる祠を建てたそうなんです。それが人を呼び寄せて、その中のいくらかに印をつけて、命を吸い取る、そうすることで地元では生贄を出す必要がなくなったそうなんです。


「交通事故から急病まで様々なものがありますが、見通しの言い道路で正面衝突したり、健康そのものだった人が急性の病気で亡くなったり、山に狙われると逃げられないらしいんですよ」


 だから地元には出来るだけ帰っていないらしい。Rさんの親は『山に登らなければ大丈夫だから』と実家に帰るのを頼んでくるそうだが、彼は毎回きっぱりと断っているそうだ。


 彼はその山の名前を出してもらえないかと提案したが、霊現象の類いが法律で認められない以上、特定の土地に迷惑はかけられないので伏せることを許していただきたい。

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