表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本怪奇譚集  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

286/331

子供はいるの

 木田さんは昔住んでいたところでなんとも気分の悪いものを見たそうだ。それはそれなりに前のことになる。


「あの頃は話す気になれなかったんですが、今じゃ一応昔話になりますからね」


 昔の話なんですが、転勤前に住んでいた田舎でご近所の人に子供が生まれたということでお祝いがあげられていたんです。まあ転勤族の私には関係無かったんですが……


 その時はまあめでたいことなんじゃないかなって思っていたんですけど、一週間ほどしてゴミ捨てに行くと子供服が捨てられていたのを見つけたんです。誰が捨てたかなんて事は分かりませんが、時期的に縁起が悪いななんて思いましたよ。


 そこからです、週に一度、幼児向けのものが定期的に捨てられるようになったんです。ある時は靴、ある時は玩具と、捨てられていったんですが、何が不気味って子供が生まれたというご近所さんのその子供を一向に見ないんですよ。夫婦がそろっていたので子供が病院にいるわけではないと思うんですよ。だけどいつどこで会っても子供を連れている様子をまったく見ないんですよ。


 ただ、子供に何かがあったなんて話も聞きませんし、それが続いてから聞けるような雰囲気ではなくなりました。いや、そのゴミがその人達の出したものだという根拠があるわけではないんですよ。ただ、なんだか偶然の一致にしては不気味に思えてしまいまして、できるだけ出会うことが亡いように気をつかいました。


 しばらくゴミを出しているとそういうゴミも無くなったんですけど、その頃にはその家の子供の話は全く聞かなくなったんです。不思議なことに近所の住人も子供が生まれた事なんてなかったかのように振る舞うんですよ。その……不謹慎な話ですが、その家で何か不幸があったという話もなかったですし、子供を見ないのは何かおかしいなと思ったんですが、確かめる気にはなりませんでした。


 なんだか不気味だったので聞かない方が良いだろうなと思いそれに触れることはなくなりました。


 結局、それからしばらくして転勤が決まるまでその家の人とはロクに話をしませんでした。怖いので知りたいとは思いませんよ。なぜ何も見なかったのかは分かりませんが、きっとその家には赤ちゃんが育っていたと信じたいものです。そうでないならあまりにも救いようのない話じゃないですか。だから私はその家ではしっかり子供が育っていて、何かのタイミングが合わず見なかっただけだと思っています……いえ、信じています。


 それだけ話して木田さんは私に『だからこれは怪談でもなんでもないんですよ』と言い謝罪をした。私は嫌な想像が頭をよぎったが、現場に住んでいた彼が怪談ではないというのだからきっと何も起きていないと信じることにした。だからこの話は怪談ではない……はずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ