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合格発表の日

 Lさんはその日、大学受験の発表日だった。地元の大学ではあったのだがWEB公開ということで、自分の番号を見ながら大学のページを何度も何度も急くようにリロードしていた。


「気が立っていたんでしょうね。他のことはあまり考えられないくらいにはカリカリしていました」


 時間まで公開されないのは分かっていてもついついリロードを繰り返すことになる。発表時間の一時間前にはゲーマーもかくやというほどの連打をしてしまっていた。


 本当に気が気じゃないんですよね。うちに浪人する余裕はないので一発勝負ですし、その前の晩はロクに物が喉を通りませんでした。精神的に辛いんですよね、仕方ないのでしょうが、自己採点ができるシステムならもう少し気が楽だろうと思いますよ。


 採点さえ曖昧な結果が出るのを待つのはさぞ精神的に辛いだろう。彼女の受験は楽勝と言うわけではなかったので余計とこの一回きりの勝負にかかっている物が多かった。


 あと十五分くらいだなって思ったところで玄関のチャイムが鳴ったんです。無視していたんですけど何度も鳴らされるので私も渋々出て行きました。さっさと来客に帰ってもらいたかったですから。


 玄関を開けるとそこには祖父が居たんですよ。こんな大事な日のこのタイミングでなんで来たんだろうと思いながらそっと帰ってもらおうと思ったんです。ただ、『帰れ』とハッキリとは言えませんから『何の用?』って聞いたんです。そうしたら、『孫の合格祝いじゃ、もらっとけ』そう言って一枚の祝儀袋を差し出してきたんです。そこには合格祝いと書かれていて、ポカンとしながらそれを受け取ってまじまじと見たんです。


 中にいくらか入っているんでしょうけど、今はそれどころじゃ無いので帰ってもらおうと顔を上げたら、誰も居なかったんです。ここまで来た痕跡も残ってないですし、幻だったのかなと思うくらいでしたが、手に持っているお祝いが確かに誰かがそれを手渡したことを示していました。


 そんなことを気にするような余裕はなかったので、深くは後で考えるとしてPCの前に戻りました。大学のページをリロードするともう合格発表がされていました。にじむ手でスクロールしていくとそこに私の番号があったんです。ホッと胸をなで下ろして机を見ると、さっきもらったお祝いが残っていました。アレは夢じゃなかったんだと思いながら中を見ると一万円札が入っていました。


 おじいちゃんもお金無いのに無理するなあとか思ってから気がついたんです。祖父は結構な年で足が弱ってうちまで歩いてこれるはずがないんですよ。じゃあアレは誰だったのかという説明はつかないですし、諦めて合格の喜びを噛みしめていました。


 結局、今も祖父は生きていますしアレが生霊だったのか祖父のそっくりさんだったのか、一体なんなのかは分かりません。ただ、その一万円札が確かにその時誰かが来た証拠になっていました。


 話は以上だそうだ。そもそも合格発表がネット上で行われるのに、スマホもPCも持っていない祖父がどうやって合格を知ったのかは分からないし、そもそも祖父は発表より前に来たはずなのでどうやって合格を知ったのかは分からない、だからそれが彼女の祖父だったのかどうかは疑問が残るのだそうだ。

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