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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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サイレンとチャイム

 小学校の七不思議なる物が昔はそこかしこにあった。実際にあるかどうかはさておき、噂半分に流れただけだ。世紀末が近づいており、ノストラダムスの大予言が流行っていたというのも否めない。そんな時代の話だ。


 そろそろ夏も近づこうかという時、Sさんは学校に忘れ物をして取りに行くことになった。愚痴りたくもなるのだが、渋々学校に向かった。


 暑くなってきた頃の話、汗をかきながら教室の扉を開けた。いろいろ悲惨な事件が起きる前だったので、教室の鍵が開いていても世論が許さないなんて事は無かった。


 そうして教室を開けると、むわっと熱気が吹きだしてきた。いくら初夏とは言え、当時はそこまで暑くないはずなのだが、日光で温められたのかと思いつつ自分の机を探した。


 そして忘れていたノートを回収するとさっさと帰宅をしようとした。そこで『ウー!』と大音量でチャイムが音を立てた。何故か息苦しくなって身体が熱っぽくなったので、大急ぎで教室を出た。サイレンは教室の外では聞こえておらず、妙な気のせいだったのだろうかと思い帰った。


 その後、学期末も近いかという頃、学校の歴史を聞いた。どうも第二次大戦で空襲を受けた中でもその地域で一番被害が大きかったところに小学校を建てたらしい。どうも壊れているとは言え、上物を壊すのにもお金がかかるので、まっさらになるまで焼かれたそこが学校を建てるのに選ばれれることになった。


 そうしてがれきをどけて校舎が建てられたのだった。Sさんはあの時のチャイムから鳴ったサイレンはきっとその時の空襲警報に違いないとなんとなく思った。


 小学校の夏休みで登校日に久しぶりに学校に行くと、普段は気にしないのだが、立てられていた石版が気になった。普段はどうせ子供への目標なんだろうくらいに思っていたのだが、何故かその日は気になってしまった。


 読んでから絶句した。それは慰霊碑だったのだ。結局、それだけの体験なのだが、それを裏付けるように帰宅すると祖母があそこに行った日が空襲のあった日だったと話した。


 ああ、あの熱さはそういうことか。そう納得したので一応納得はいった。結局、未だに半世紀以上前のことを引きずっているんだと思うと、なんだか少しだけ幽霊も楽じゃないんだななどと思ってしまった。


 その日、学校に向けて黙祷をして眠った。気のせいかもしれないが、真夏だったのに随分と涼しいような気がしたのは気のせいだったのだろうか。


 以上の話を聞いた。何か話題性があるわけではないが、そろそろ戦中世代が居なくなってしまうのではないかと言うほど第二次大戦が昔のことになったと言うことを残すため、個々に書きしたためた。

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