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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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レジャーランドの幽霊

 Aくんの故郷にはテーマパークがあった。所謂バブル時代の負の遺産というヤツだ。全国にあるバブルの跡地のようなものだが、彼のソレは少し違ったらしい。


「Bってやつにその事を話したんですよ。そうしたらアイツいい気になって『案内しろ』とか言うんです。もう閉鎖しているから見るようなものはないと言っても訊かないんです」


 そうして渋々ながらも二人で隣県のテーマパーク跡にまで足を運んだ。とは言ってもバブル期に作られたものだけあって、車でなければ行けないような場所にできていますが……


 そこには寂れて放置されたよくある遊園地の跡地が広がっていました。雑草も伸びていますし、アトラクションが動いていることもない、ふつうの放棄された場所があるだけなんです。


『思ったよりつまんねーな。中入ってみようぜ』


 Bのヤツ、そんなことを言いだしたんですよ。ここがいくら放棄されているからと言って荒らすようなことはしない方がいいって分からないんでしょうか? ただ、その時のアイツは妙に乗り気で朽ちた門扉を乗り越えて入っていったんです。仕方がないからついて行きました。


 まあ中はごく普通の廃墟って感じで特筆するようなものも無いですし、Bに買えるよう言おうとした時なんです、Bが顔を青くして言うんです。


『なあ、あの観覧車って外から見た時は一番上にあるのは赤いゴンドラじゃなかったか?』


 そんなこと知らないとしか言えないんですが、Bは妙にそれが気になったらしく、自分から帰ろうと言い出しました。僕が見た時は観覧車に赤いゴンドラは無かったです。


 Bもそれが何か怖かったらしく、それ以降あそこに行こうとは言わなかったんですが、大学でそれを話すとCって言うオカルト好きの先輩が『ああ、あそこか。行ったんだ』と言うんです。『知っているんですか?』と聞くと少しばつが悪そうに『行ったことは無いけど有名だよ。ただ……あそこは……行けば分かるか、今週の日曜、Bも連れてこられるか?』そんなことを言われたので、頷くとC先輩の家に集まって、皆であの人の車に乗り、そのテーマパークまで車を走らせたんです。


 テーマパークには何もありませんでした。いや、ついたところがテーマパークには見えなかったんです。一面がアスファルトで覆われた平地がそこには広がっていましたから。


『ま、こんな感じだから行ったところで何も起きないんだけどね。時々まだあった頃の姿が見えるらしいよ。僕は見た事なんて無いけどね。君らは見たんだろう? 良い土産話ができたじゃないか』


 帰り道で僕とBは何も話しませんでした。あそこに何かがあったということ自体がおかしな事なんでしょう。一体何を見てしまったんでしょうかね……幸い僕もBも何か霊障に悩まされているわけでもないですから、害の無いものなんでしょうけどね。


 そう言ってAさんは話を終えた。なお、Bはきちんと大学に来ているしそろそろ卒業らしいが、二度とAさんの所属しているサークルに顔を出す気は無いと言ったらしい。

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