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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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幽霊ダービー

 これは一ノ瀬さんという事故物件に住んでいる方の友人である平さんの話だ。彼は一ノ瀬さんの住むマンションに行って恐ろしい目に遭ったらしい。


「かなわんですよ、いや、幽霊だの超常現象なら驚かない自信があったんですがね、流石にアレには関わりたくないんすわ」


 そう語る平さん。彼の恐ろしい体験を語ってもらった。


 あの時は一ノ瀬のヤツが遊びに来ないかと言ってきたんですよ。アイツが事故物件に住んでいるのは知っていたから『なんか悩みでもあるのか?』って訊いたら、『そんなとこだ』というので相談に乗る感覚でアイツの住むマンションに行ったんすよね。


 泊まりでって事なので荷物を少し詰めた鞄を持ってアイツのところに行ったんす。小綺麗なマンションで個々が事故物件とは信じられなかったっすよ。アイツが言った家賃は破格でしたからね。羨ましいなと正直思いましたよ。


 アイツの部屋のボタンを押してエントランスを開けてもらったんで、さっさとエレベーターに乗って登っていったんすが、屋上の部分でしょ、ボタンの一番上の場所がガムテープでびっしり貼られていて押せないようになってましたね。事故物件でここまで屋上にこだわるって事は……大体想像つくじゃないっすか?


 一ノ瀬は俺を歓迎してくれましたよ。ビールを手土産にアイツの部屋に入ると目についたのはビデオカメラなんすよ。何故か窓の外に向けてカメラを撮影していたんすよ。『アレ何?』って訊いてみたんすけど『今に分かるよ』って言ってはぐらかすんすよ。多分何かあるんだろうと思いましますが、言ったところで答える気は無いでしょ。


 だから二人してビールを飲みながらサラミをつまんでいたんですよ。その時、俺は窓が見える方に、一ノ瀬は窓に背を向けて座ってたんすが、窓の向こうを音も立てずに女が落ちて言ったんですわ。まあ肝が冷えるんです。で、今『女……女が……』と俺が動揺していると、アイツは『チッ……』と舌打ちをしてカメラの操作を始めたんすよ。


 それからもう一度舌打ちをして『すぐ戻る』と言って部屋を出て行ったんすよ。なんだか不機嫌そうでしたがそれどころじゃないっすよ。カメラに映ってるのかもしんないですけどそんなもの見たくないです。なんで、アイツが帰ってきたらさっさとお暇しようと思ったんすよね。


 少ししてアイツが帰ってくるなり『今日は運がないわな……』と落ち込んだ顔をしているんすよ。気になったので『何があった?』と聞いたらアイツはとんでもないことを言い出したんですよ。


 どうもそのマンションでは定期的に飛び降りがあるんすが、どうも家族がそろって飛び降りてからそれが始まったらしいんすよ。それで始めは怖がっていた住人も見慣れてしまって、『次に落ちるのが男か女か賭けようぜ』なんて言いだしたヤツがいるそうっすね。


 それが流行って、結構な人数が幾らかの金額を賭けているらしいんすよ。俺を呼んだのも、この前一ノ瀬のヤツとパチンコに行ったら勝てたので『お前がいれば勝てるかなって思ったんだよ』というものだから、取るものも取りあえず雑に挨拶してアイツのマンションから逃げましたよ。もうあれとは関わりたく無いっすね。


 賭け事は違法であるというのはさておいて、勝手に賭けの対象にされる幽霊もたまったものではないだろうなと私は思った。平さんはまだ一ノ瀬さんと交友があるらしいが、そのマンションには絶対に行かないようにしているそうだ。

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