表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日本怪奇譚集  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

268/331

今入れる保険

 Iさんは最近悩んでいることがあるという。なんとも理不尽な話だが、せめてお金になるならと話してくれるそうだ。


「始まりは保険の営業だったんです」


 保険の営業といっても営業さんが来て勧誘したのではない。ある日保険のダイレクトメールが届いたのだ、そこからIさんの悩みは始まった。


「自動車保険のものだったので、車を買った時に保険に入っているのでその封筒は開けもせずに捨てたんです。それが始まりでした」


 特に問題無いと思っていたのだが、翌週になって困ったことになった。交通事故を起こしたのだ。彼女は保険には入っていたが、車両保険には節約のため入っておらず、相手側が無保険だったため車を失うこととなってしまった。


「それだけなら偶然なんですけどねぇ……」


 彼女は暗い顔で続ける。


 その後しばらくして火災保険のダイレクトメールが届いたんですよ。自動車保険のこともありましたが、火元らしきものはオール電化なので無いですし、石油ストーブもガスファンヒーターも、給湯器も無いので大丈夫だと思ったんです。ただでさえ車がなくなって生活が苦しいのに新しい保険なんて入れませんよ。


 少し嫌な予感はしましたけど、無理をするわけにもいかずその封筒を捨てたんです。開けようかとも思ったんですが、開けたら心配事が増えそうな気がしたので無視しました。そうしたら翌月に……


 一呼吸置いて続ける。


 空き巣が入ったんですよ、財布の中の現金と、現金を貯めていた金庫を盗まれたんです。警察に連絡はしましたがあまり期待はできないと言われました。その後に火災保険には盗難の被害を補償してくれるプランもあると知ったんです。そんなことを後から知っても何もかも手遅れなんですけどね。


「ただ、今までのことで生活は苦しくなりましたが、生きていけないほどではないんです、預金も銀行にしていますし、銀行の破綻でも無ければ問題無いんですが……これが届いたんですよ」


 そう言って彼女がカバンから取り出したのは、某生命保険の案内だった。まだ封筒に封がされたままである。


「これを開けるべきか悩んでいるんですよ。ただ、これがもし使えるとなってもそれはもう手遅れなんでしょうけど……なんだか捨てる気にもなれないんですよ。良い方法って無いですか? あと、全部別の保険会社からの案内なので誰かがうちを狙ってるって事も無いはずなんですけど……」


 正直何も言えなかった。物騒なものだなと思ったが、何か確信があるわけでもない。ただ無関係と切って捨てるにはあまりに出来すぎていたので、彼女にお祓いをしてくれる神社の内をして別れた。以後連絡が無いのだが、便りがないのはよい便りなのだと信じたいと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ