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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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配信者は永遠に不滅です

 Hさんはスマートフォンで動画配信サイトを見ていた。その日から妙なことが起きるようになったらしい。


「生霊ですらないんでしょうがねえ……敢えていうなら付喪神みたいなものでしょうか」


 なんとも歯切れの悪い言葉から話は始まる。


 いやあ、配信者が引退……要するに卒業ですね、ソレがあった時からの話なんですよ。


 その配信者は割とマイナーであり、卒業配信には多くはないが惜しむ人たちが集まった。コメント欄は残念がる言葉や、惜しむ言葉、悲しむ言葉などが並んでいく。それでも目で追えないほどの勢いで流れていったりはしないところが弱小配信者なのでしょうね。


 それで、配信で最後ということで投げ銭がポンポン飛んでいました。月内に課金機能を停止するそうなので最後ってことで皆投げていました。まあ私も少し投げたんですが……


 最後に配信者が「私はいつでも皆の側に居るよ! 応援ありがとうね!」と言い、配信の終了画面が映ってから配信から切断されるまでチャットは流れ続けていました。本来はそれだけで終わるはずなんですけどね、問題は終わった後ですよ。


 その日は配信が終わったのでアプリを閉じてスマホを充電器に繋いで寝たんです。その日はそれで終わったんですが……おかしな事がそれから起き始めました。


 深夜まで続いた配信だったので終わったらさっさと寝たんですよ、そのはずなんですが起きるとスマホが頭の横にあったんです。充電は完了していましたが、夜に充電ケーブルを繋いでいたはずなのでスマホが枕元にあるのはおかしいんですよ。ただ、その日は勘違いということで済ませることにしました。多分寝ぼけて充電ケーブルを外してそのまま寝たんだと思いました。


 でもね、時々同じ事が起きるんですよ。充電器の場所を寝ぼけた状態で外せないような場所にしたこともありますよ、それでも起きてみるとスマホが枕元にあったんです。


 それで、その現象が起きた日にはカレンダーに印を付けていったんです。そうすると火曜日と木曜日と土曜日にしか起きていなかったんですよ。その理由をよく考えてみました。そうするとその現象が始まったのはあの配信者が定期配信をしていた日でした。『いつでも側に居る』という言葉がなんとも恐ろしく思えてきました。リスナーにそんなに思い合いを注ぐような配信はしていなかったはずなんですけどね……彼女はもしかして卒業は不本意だったんでしょうか? バーチャルの存在だからって、その向こうには人がいるわけで……つまりはこれは生霊か何かだと思っているんですよ。


 でもデジタルデータに付喪神のようなものが宿るというのも聞いたことが無いですし、やはり配信者が何かしているんでしょうか? こんな不気味な現象を起こすくらいなら卒業をやめて欲しかったんですけどね。


 『配信者も楽じゃないんでしょうね』そう言って彼は話を終えた。なお、その現象が起きる度に少しずつ貯金箱にお金を入れて、彼女が復帰した時に投げ銭として使おうとしっかり貯めているらしい。

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