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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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二つの話

 これはFさんに聞いた話だが、彼は結論を出さないで欲しいと言っていた。だから事実のみを並べるが、そこに関係があるのかは不明だ。


「魚が食べられないってなかなか不便なんだよなあ……刺身さえ食べられないのはやっぱり社会人としてね……」


 そう語るFさんには魚に関する思い出があるそうだ。あまり後味のいい話ではないが、彼は多分関係ないのだろうと主張していた。


 昔住んでいたのが田舎だったんですが、当時はブラックバスがもんだになんてなっていなかったので、平気で子供は川で釣りをしていましたよ。時代が時代なので割とおおらかだったんでしょうね。当時の私も当然のように釣りに行っていました。問題はある日の話なんです。


 その日は学校から帰るなり釣り道具一式を持って川に出かけたんですよ。空は明るく絶好の釣り日和でした。早速餌をつけて釣りを始めたんですが、何故かさっぱりアタリが来ないんですよ。投げる場所を変えても同じ、魚の警戒心が強いのかとも思ったんですが、今までは普通に釣れていたので突然釣れなくなるといういのも何か違和感があったんです。


 まるで魚がかからず諦めかけていた時でした。ウキがポチャンと沈んだのですぐに竿を引きました。上手くヒットして魚を釣ろうとしたんですが、その魚が妙に元気なんですよ。手応えがあると言えば聞こえは良いですが、大物でもそうそうない引きなのでこっちも必死でしたよ。


 しばし格闘していると、魚の方も力尽きて浮き上がってきたんですよ。それが案外小さな魚で何故これがあれだけの引きをしていたのか謎でしたが、釣れたので魚籠に入れて帰宅をしたんです。


 それで魚の調理を任せて自分はテレビを見ていたんですが、キッチンの方から何か変な匂いがしたんですよ。おかしいなと思いそちらに行くと母親が換気扇を回していました。


「あんたこの魚なんか変な匂いがするんだけど大丈夫なの?」


 おかしいな、何度も釣ってきた魚に違いは無いはずなんだが……しかし実際それを焼いている網に近寄ると確かに微妙な刺激臭が漂った。明らかにおかしいのだが、やっとの思いで、やっと一匹釣り上げた魚なのでなんとか調理してもらい、それを食べました。


「ハッキリ言うと今でも思い出せるくらい不味かったんですよ」


 しかし釣った手前食べきった。そして風呂場で汗を流して布団に入ったのだが、そこで奇妙な夢を見た。


 始めは目の前に太った男が立っているのだと思った。しかしその男はよく見ると太っているのではなかった。身体が腐敗しパンパンに膨らんでいました。吐き気を催すような匂いが夢の中だというのにしましたよ。そこで汗をたっぷりかいて目を覚ましたんです。何故あんな夢を見たのかは分かりません。いえ、まあ……分からないということにしています。


 この話とはまったく関係のない話ですよ。


「そう念を押して彼は語った」


 一週間後に川の上流で水死体が見つかったんですよ。調べによると遊泳していて溺れたのだろうという話でした。ああ、もちろん目撃したわけではないですし、話を伝え聞いただけですよ。ただ今さら調べようとも思いませんし、新聞に載ったそうですけどそれは見ないようにしました。世の中知らない方がいい事ってあると思うんです。


 だからその件はまったく関係のない話、そう信じたいですね。そうしてまったく関係の無い二つのことが起きたと言うだけの話です。


 そう語ってFさんは話を終えた。その二つの偶然を繋げたくなるが、彼は絶対にそれを繋げるつもりは無いようだ。だから全ては闇の中であり、知らない方がいいこともあると言うだけの話になった。

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