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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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単独登頂の犠牲

 Kさんの地元には霊山があるそうだ。その山は別に宗教施設などがあるわけでもない、ごく普通の山だ。


 ただ、何故かその山には奇妙な言い伝えがあり、『登山の時は男女ペアで登れ』という決まりだそうだ。だから山菜採りをしている人なども夫婦で入っているし、登山をするのは男女カップルがほとんどだ。その理由は知らないが、とにかく一人で登っている人を見たことがなかったらしい。


「それで、私もちょうどその頃お付き合いしていた人がいたので、簡単な山ですし実家に来たいと言っていた彼についてきてもらって登ろうと思ったんです」


 しかしそれは上手くいかなかった。


「大学時代なんてそんなものかもしれませんけど、彼のバイト先でシフトに穴が開いたそうなんです。私は『そこまで責任持たなくても……』と言ったんですが、彼はそうはいかないと言って出ていきました。なので地元への帰郷は単独になりました、泊まる場所は実家ですし、別にお金がどうこうは一切問題無いんですけどね」


 帰郷して、予定とは少し違うが登山道具を揃えていた。歩道があるからと言って整備されている山を普段着で登るわけにもいかない、そこで最低限の準備をしているとおばあさんに声をかけられた。


「Kちゃん、山に登るんかい? 連れ合いはおらんのか?」


「うん、都合がつかなくってさ。危なくないし一人でのぼってもいいかなって」


「私が小さい頃からあの山に一人で登るのはやめろ言われてるんやけどねえ……Kちゃん、気いつけなさいよ」


「分かった!」


 それだけ言ってKさんは元気よく山に向かった。その時の彼女は祖母の言葉を迷信を信じている老人の杞憂だろうと思っていた。だから気にすることはなく、山の麓の駐車場に車を走らせた。


 山に着いたのだが、そこはカップルや夫婦らしきグループで溢れていた。なんとなく一人で来た自分が場違いに思ったが、誰かに咎められるわけでもない。その時の彼女は、その山がデートスポットにでもなっているのだろうと考えた。


 登山については特に言うこともないそうだ。何しろ観光地なので危ないはずもない。山は危険だなどと言われるが、しっかり登山道が整備されており、案内も完璧で、さらにマップアプリで事前に付近のマップをダウンロードしていたので、持っているスマホとモバイルバッテリーが生きている限りGPSだって使用可能だ。もっともそんなものが必要無かったのは当然と言うべきだろうか、あっさりと登頂して、景色を見たのだが、田舎特有の自然だなくらいの感想しかなく、来た道をさっさと下山した。


 そこまでは大したことのない話だった。Kさんも何故そんな曰くがあるのかさっぱり分からない。普通に帰省を楽しんで、それから大学に戻った。


 青天の霹靂の如く、彼女はその時付き合っていた男性から別れを告げられた。なんの予兆もない、本当に突然そう言われた。


 交渉の余地はないし、彼も別に浮気や他の恋人ができたわけでも内。ただ彼女が帰省している間に何かあったのだろう、彼はKさんに恐怖の視線を向けていた。


 ここで粘ってもダメだろうなと思ったKさんは別れるのを承諾し、あっさり恋人は消えてしまった。


 何があったかは分からないが、何かがあったのだろうとは思う。今さら彼に何があったのか問うつもりは無いが、Kさんはこれからは帰省してももう二度とあの山には登りたくないといっていた。

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