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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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事故物件での宴会

 Bくんが大学生の頃の話だ。ようやく酒が飲める歳になり、まわりが合コンだなんだと騒いでいる中、彼と彼の友人たちはそんなものと無縁だった。


 ひとえにアニメサークルに入っている賜物だというのがBさんの談だ。まだ国民的作品ならともかく、美少女が大量に出てくるアニメでは受けが良くない。それでも本人たちは満足してそれを楽しんでいた。そんな時、全員が酒を飲める年齢になり、クリスマスパーティーを開こうと言うことになったらしい。


「クリスマスパーティーと言っても、家族や恋人と過ごすなんて綺麗なものじゃないですよ。こじらせた連中が集まって、アニメの円盤を流しっぱなしにして、PCではVTuberのクリスマス配信を流し、ありったけのチキンとケーキを持ち寄って、好きなように飲んで食べて楽しもうという企画でした。意外とノリの良いやつも多かったのでその企画が成立したんですよ」


 そこで一つ問題になったのがどこで開催するかなんですが、俺の部屋に割とすんなり決まりました。住んでいるアパートが両隣誰も居ませんし、最近下の部屋も住人も出て行ったみたいなんですよね。作りは安いですし、防音性能なんてほぼ無いんですが、音を立てても聞く人がいないだろうというわけで俺の部屋が選ばれました。まあ中には深夜アニメを大音量で流して怒られた経験のあるやつもいましたし、それならウチで良いかなって思ったんですがね……


 AくんとBくんとCくんが集まった。皆それなりに大きな袋でクリスマス商戦で売っていたものを購入していた。鞄を持っているのは自分の推しVTuberの配信を見るためです。完璧な準備をしてパーティーは始まりました。


 全員お酒が飲める歳だったんですよ……それは間違いないんですが……てっきり皆ビールくらいを盛ってくるだろうと思っていたんですが、9%の缶チューハイを大量に持ってきたやつとか、甲類焼酎と割り材をたくさん持ってきたやつとか、とにかく安く酔うことを目的にアルコールを効率よく採れる酒を持ち寄ってきたんですよ。それも結構な量です。飲めるようになって一年も経っていない連中ばかりで酒をガブガブ飲むんです。結果は言わずもがなでしょう?


 一応アニメの方は再走すれば良いんですが、推しのVTuberのクリスマス配信は生で見たいので、ジャンクな料理を皆でマナーも何もなく食べながらそれぞれの推しとクリスマスをお祝いしたんです。そこから一気にお酒を飲み始めるものだから一気に皆酔い潰れちゃいましたよ。加減なんて分からない集まりでしたからね。特に甲類焼酎とコーラやサイダーを持ってきたやつは悲惨でしたね。ただでさえ度数が高いのに、少し割って飲むものだから一気に酔いが回ってベロンベロンですよ。


 全員が気絶同然に寝た後、翌日はトイレを皆で取り合って胃の内容物を吐き出していました、人生初の二日酔いにしてはあまりにも強烈でした。それで、全員が水をがぶ飲みしてなんとか立てるくらいにはなった後、部屋を見回すと料理が綺麗に全部食べられているのに気がついたんです。アレだけ酔っていたのにケーキをまわりを汚すことなく食べていたのは感心しましたよ。でもそこが問題で……


 誰も食事を食べきった記憶が無いんですよ。全部無くなっているのだから、誰かが最後の一口を食べたはずなんですが、全員が料理を食べるのを途中で寝てしまいやめたと言っているんです。じゃあ誰が食べたんだって話になったんですけど、誰も譲らないので酔いが回って食べたから記憶に残っていないんだろうということで片付きました。


 ここまでなら怪談じゃ無いんですけどね。退去するときになって不動産の手続きをして出て行くときに、その部屋を紹介してくれた人が追いかけてきてこっそり話しかけてきたんです。


 『何もおかしな事はありませんでしたか?』なんて言うから『いいえ、何も』と答えたら、『そうですか、あの物件はなかなか長期で住んでくれる人がいないんですよ。別に死者が出たとかそんなことは無いんですけどね』と教えてくれたんです。


 今でもアレが幽霊だったのかただの記憶の混濁だったのかは分かりません。ただ、今にして思うと食べ物を持ち寄ったんですが、ゴミにチキンが全く無かったんですよね。骨もですよ? 骨なんて食べられっこないじゃないですか。だから別に被害があったわけでも無いんですが心霊現象だと思ってますよ。


 それでBくんの話は終わった。特に怖いわけではないのだが、心霊現象らしきものに違いは無いので記録しておくことにした。

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