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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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減った?

 Cさんの地元には幽霊屋敷と子供が呼ぶ家があったらしい。その家はずっと前から誰も住んでおらず、近寄るなと厳命されていたそうだ。


 特に面白いものもなさそうだったので近寄る子供もいなかったのだが、いい年をしてそこに行く羽目になり、未だにおかしいと思っていることがあるそうだ。


「あそこでおかしな事があったって言ってるのは俺一人なんですけどね、どうしても納得いかないんですよねえ……」


 そうしてCさんは自分だけが知っている怖い話を教えてくれた。


 子供の頃は興味すら無かったですよ。そもそも外で遊ぼうにもどこもかしこもボール一つまともに使えないような場所ばかりでしたから。それに昔と違ってゲームを集まってプレイしていても特に文句も言われませんでしたしね。だから町に幽霊屋敷があるとは知っていましたけど、誰一人興味を持っていなかったんですよ。


 それで高校までは関係の無いものとして済ませていたんです。ただ……大学に入ってからが問題でして、Tという男と知り合ったんですが、割と気があったので友人になりましたが、ソイツは妙にオカルトが好きなやつだったんです。心霊写真だの、UFOの写真だのと言った胡乱なものを見せてきましたよ。


 しかし心霊写真ってスマホで見ると妙にチープですよね、フィルムで無いと雰囲気がでないというか……いえ、そういう話じゃ無かったですね。


 どこで聞きつけたのか、Tは俺の地元に幽霊屋敷があると知ってしまったんですよね。困ったことにTは顔の広い男だったので、同志を集めて幽霊屋敷を探索しようととんとん拍子に話が進んだんですよ。やめとけって言ってるのに案内しろとうるさいので渋々連れて行くことにしたんですが、仲間の一人が車を持っているそうで、電車では便数が少ないので車で行こうって話になったんです。


 で、俺は案内役ですよ、いいとばっちりなんですけど仕方なく案内だけはすることにしたんです。


 当日、集合場所に車が来たんですよ。Tのやつ、結構な人数を集めていたので車にTと俺がのると満席になりました。軽自動車でも無いのに満席になるほどよく集まったなと思いながら道を案内していきました。それで久しぶりに地元に帰ってきたわけですが、こんな帰省は望んだものではないので実家にも顔を出さず、幽霊屋敷を眺めたら帰ろうと案内したんです。


 そうして待ちのやや外れにある幽霊屋敷に着いたんですが、昔の思い出より随分とボロくなっていましたよ。管理されてない家なんてそんなものなんでしょうけど、誰も住んでいないだけでここまで変わるのかと思いました。


 それで屋敷を一周見て回ってさあ帰ろうとしたんですが、誰かが『せっかくだから中も見ようぜ』とかふざけたことを言い出しまして、ソイツに同調するように『どうせ誰も住んでないしいいな』とか言ったやつがいて、その幽霊屋敷に入る流れができたんです。玄関がガラス戸でこちらは懐中電灯を持っていますから、簡単に叩いて割れるんですよ。放置されてるんだからいいだろなんて暴論で家を壊して中に入ったんです。


 で、怖い目に遭ったかといえばまったくそんなことは無いんですよ。ただの廃屋でした、幽霊の正体見たり枯れ尾花って言いますもんね。皆すっかり白けて幽霊屋敷を出て車に戻って大学のところまで皆を送っていくことになったんです。


 そこでふと違和感を覚えたんですよ。車の中が快適なんです。何かがおかしいけれど何がおかしいのかよく分からなかったんです。必死に考えて気がついたのですが、行きは定員いっぱいまで乗っていた車なのに、何故かゆったりと乗れているんです。そこで人の数を数えたんですけど、明らかに一人減っているんです。その日にあったやつなので顔も名前も一致しません。ただ、車に空席があったことは確かです。


 Tに『人数が減ってないか?』とこっそり耳打ちしたんですが、アイツは『何言ってんだ? この面子で来ただろ』と何もおかしく思っていない様子でした。俺が妙に真面目に言っているのを感じたのか、仲間に『皆そろってるよな?』と言いましたが、Tの言葉に皆が当たり前のような顔をしていたので、どうやら俺には何かが見えていたのか、あるいは誰かが消えて俺以外が忘れてしまったのか、どちらかが起きたようですね。


 残念な話ですが俺はTと距離を置いて他のサークルに入ってそれなりに仲良くやっていきました。


 そこまで語って、『これは怪談とは関係無いんですが……』と前置きして私に言う。


 これじゃ俺がおかしいみたいな話で終わっちゃうので確かに人が減っていたことを書いてください。嘘でもなんでもなく俺は確かに誰かが減ったことに気づいたんですよ。


 真面目に顔をして語る彼に嘘や冗談を言っている雰囲気は無かった。真相は不明だし、行方不明者も出ていないが、彼は未だにあの廃屋には何かあると信じているという。

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