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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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開かずの部屋と生贄の席

 Sさんは最近入社した会社に不気味な部屋があるという。ただ、彼女は他の会社で働いたことがない新卒のため、それが普通なのかどうか分からないと私に訊いてきた。それがどこか宗教か怨霊が絡んでいそうだというわけで話を聞いた。


「不気味な部屋と言うことですが、一体何があるんでしょうか?」


「ごめんなさい、分からないんです……ただ先輩からも絶対に入るなとだけ言われているんです」


 開かずの部屋というやつか……あまり珍しい話ではないが、会社にあるというのは少し珍しい。


「でも不気味なのは分かるんですよね?」


 入ったことがないのにどうして不気味だと分かるのだろう? そもそも開けてもいないのだからただのドアではないのか。


「そうなんですけどね……働いているオフィスの隣にあるんですけど……その部屋の方に向いて作業をしていると壁にチラチラ何かが見えるんです。それが人間の顔のような気がするんですよね、ただ、驚いてハッキリ見ると何の変哲もない壁なんですけどね」


 なるほど、それは確かに不気味だろう。ではその部屋には何があるのだろう? 俄然興味が湧いてしまった。


「あ、私はその部屋に入る気は全く無いですからね。申し訳ないのですがその部屋がおかしいのは確かなんですが、確かめるのは危険だと思っていますので」


 危険とまで言い切るのか……一体何故なのだろう?


「危険なんですか? 開かずの部屋なら入らなければ害はない気もしますが?」


「そうでもないんです。私は開かずの部屋への壁に向いている席なんですが、そこはまだ変なものが見えるだけなんですよ。問題はその部屋との壁付近に席がある人たちで、その人達は必ず体調不良や身内の不幸で退社しているんですよね」


「そんなに怪しい部屋があるのに放置されているんですか?」


 そう訊ねると彼女はキョロキョロ周囲を見渡して、声を潜めて言う。


「……実はですね……あの部屋には定期的に社長が生贄を与えているという噂が立っているんですよ。その生贄というのがさっき言った退社した人たちですね。皆さん結構な体調不良も発症していましたからね。しかも……大きな声では言えませんが、その席に座る人って大抵会社として大した仕事を与えられないんですよ。事務なんですが、これといって何もせずぼうっと席に座りっぱなしなんです。電話番さえしないんですよ。それなのに上司もそれに苦言の一つも呈さないわけですよ。だからみんなあそこは生贄の専用席だなんてコソコソ言ってますよ」


 なんとも気が滅入る話だ。生贄にされた人はたまったものではないだろう。しかし一部屋と採用した人材を潰してまでその部屋を残しておく意味は何だろう?


「なんで誰も社長に聞かないんですか? どう考えてもそこをなんとかするべきじゃないですか?」


「無理ですよ、私も見ちゃったんです、社長が大量の数珠を持ってその部屋に入っていくのを見ちゃったんです。だからきっとあそこには何かそれなりのものがいるんだと思います。できればそんなものと関わりたくはないですから」


 結局、その部屋はこれから先も残るだろうという話で終わった。ただ、相変わらず某県某所の求人は結構な好待遇で出ており、ほとんど採用試験もなく採用された人がその席に配置されているという話だ。

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