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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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自宅内の禁足地

 Pさんの実家は三階建てだ。しかし何故か二階部分は使わず、ほぼ倉庫になっており、一階と三階のみを使い二階は通過するだけの場所となっているそうだ。その事について彼女が分かっていることを話してくれた。


「幽霊なのかどうかは分からないんですが……」


 そう言って二階に何があるのかを話し始めた。


「二階は……そうですね、昔から……いえ、私の実家はそんなに古いものではないんですが、何かがあったようなんです。わざわざ三階建てにしているのに二階を倉庫にしているのはもったいないじゃないですか。三階が倉庫になっているなら登るのが面倒だからとか理由を付けられそうですが、二階を通過するだけの場所にしているので説明がつかないんですよ」


 彼女の実家は三階建てで、それなりの広さがあるらしいが、それだけに丸々デッドスペースになっている二階がもったいなく感じられたそうだ。


「一度二階に自分の部屋が欲しいと言ったことはあるんです。いや、自分の部屋はありますよ、でも二階を全部使ってないんだからそこを自分のものにすればかなり広く使えるじゃないですか?」


 その答えは怒鳴り声だったそうだ『ふざけるな!』などときつく言われたそうだが、何が両親をあそこまで怒らせたのかは分からない、ただあの二階の話だけはしたくないんだなと言う意志はしっかり伝わった。


「その二階には何かあるんですか? 例えば……曰く付きのものとか?」


「ええ、実は一度だけ二階の探索をしたことがあるんですよ。両親ともに留守にする機会があったので二階を調べてみることにしたんです。怪談から二階の戸を開けて中に入ったんですが、通路の奥に仏壇が置いてあって、部屋の全てが(かんぬき)で押さえてあったんです。これは関わっちゃいけないやつだと思ってそっと引き返そうとしたんです。その時にガタッと閂が揺れたのを私はハッキリと聞きました。それ以来あそこは家の中の禁足地なんだなと思っています」


「一応新築の家なんですよね?」


「そうですね、ただ……大きな声では言えないんですが、母方の実家が新興宗教にはまっているらしく、仏壇を買ってからウチに押しつけてきたそうなんですよ。両親も困ったそうですが、お金をせびられたわけでもないので仕方なく受け取ったらしいです。結構な金額がしたそうですが、あの黒塗りの仏壇が新興宗教が信者に売ったものなんじゃないかと思っています」


 一応その新興宗教の名前は伏せさせていただく。逮捕者が普通に出る宗教と言うことで読者諸氏には察していただきたい。


「仏壇って曲がりなりにも仏様を祀っているので悪いものじゃないと思うんですがね……直感の話なんですが、あの仏壇に祀られているのは仏様なんかじゃなくもっと不気味な何かだと思います。仏様にしてはあまりにモラルが無いですから」


「それで、ご実家の二階は今どうなっているのですか?」


「さあ? 大学に受かった時にこれ幸いと実家から逃げ出しましたから知りません。両親に会いたくなったらこっちに呼んでいます、向こうに行くことは無いですね。両親ともに私が帰らないのを責めてこないのでなんとなくですが実家の状態が分かっているんじゃないでしょうか。じゃあ何故あそこを離れないのかはよく分かりません。不動さんとして売り払ってしまえばいいのにって何度も思いましたけどね。なんか実家は二階に何かを隠しているような気がしてならないんですよ」


 『全ては想像ですし、実際に何があるかなんて知ろうとは思いませんがね』と言って彼女は話を締めくくった。結局、何があったのかは分からないが、彼女が言うには絶対に良いものではないことは確かだそうだ。

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