表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/293

正夢

「私、見た夢が予言みたいになっているんです」


「予言……ですか」


 Pさんは特別な夢を見る日があると言う。正夢のようなものだが、問題はあるらしい。


「ただの正夢なら気にもしないんですけどね……問題は決まってその夢が不吉なものなんです」


 初めて見たのは曾祖父が死んじゃう夢でした。交通事故に遭う夢だったんですけど、実際は元々危なかった人だったので老衰で亡くなっただけなんですけどね。それからよく夢を見るんです。


 その後は叔父さんだったかな? 夢の中で銃で撃たれて死んじゃう夢だったんですが、翌日に心臓発作で死んじゃったんです。まだ子供でしたから繋げて考えることはできませんでしたが、できれば考えない方が良かったんでしょうね。


 彼女は寂しそうにそう言う。問題はもっと根深いそうだ。


「まだその頃は一人が死んじゃう夢だったから偶然と言えなくもなかったんです。でも……」


 その後しばらくして修学旅行に行く前の夜でした、友達のグループが川に流される夢を見たんです。その頃は偶然では片付けられないと思っていたので、なんとかして助けようと思いました。でもダメなんです、夢の中で分かるのは死ぬってことだけで、どうやって死ぬかは分からないんです。交通事故、お風呂でヒートショック、餅を喉に詰まらせる、まあいろいろありましたが、夢と同じ死に方をした人は一人もいませんでした。


 偶然と片付けたかったんですが、同級生を死なせていいものかとは悩みました。でもどうしようもないんです、修学旅行でその仲良しグループは自由行動で交通事故に遭いました。もちろん夢に出てきたのとまったく同じ子たちでした。


「一番嫌なのは自分では何にも出来ないことですね。助けられたら英雄になれるのかもしれませんが、私はいつだって傍観者以上の事はできませんでした。


「しかし、それはあなたのせいではないのでしょう? 助けられないのはそうかもしれませんが、自分で何かをしたせいではないんでしょう?」


 私の慰めの言葉も彼女には届かないようだ。悲痛な声で話し始める。


「そのはずなんですけど……私が見た夢の中には元気なはずなのに突然死んじゃう人が出ることがよくあるんです。思うんですよ、もしかすると私が死の予言をしているのではなく、私が夢に見たから死んでるんじゃないかってね」


 ゾクリとするような発想だった。私は『気のせいです』と誤魔化すことにした。しかしその後暗い顔をして彼女は言う。


「これは誰にも言ってないんですけどね……最近夢に出てくる人をある程度選べるようになってきたんです。嫌いな人がいたらその人が夢に出てきて……って事がよくあるんです。別に私が直接何かしたわけではないですけど……これは罪になるんでしょうか?」


「そこまで思い詰めない方がいいですよ。例えば粗暴な人だとその分危険な目に遭う確率が上がるでしょう? 夢で見たからではなく、夢に出そうな生き方をした人が出てきているんじゃないでしょうか?」


 気休めと分かっていてもそう言うしかない。彼女は納得してくれたかどうかは分からないが、私が彼女の夢に出てきて欲しくはないので深入りしない方がいいなとそこで話を終わらせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ