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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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環境にいい人

 Yさんの友人は買い物をする時に環境にいいものかどうかを酷く気にしていたという。過去形なのは『そうだった』からだそうだ。その頃のことについてYさんに話してもらった。


「あの人はママ友だったんですけど、とにかく自然主義でしたね。おやつを出すと言ったら生の果物だったり、他の家で出されたものに化学物質が入っていたらあとから電話が来たり、生きてて苦しそうだなって思いました。もっとも、その人自身の問題で片付くならそれでいいんですが、彼女の子供が他の家に来た時に自然とは程遠いものを出すと喜々として食べるので気の毒だなって……まわりの子たちもそういう子だからそれも仕方ないって感じでしたよ。子供が気をつかうレベルの親ってよほどでしょう?」


「そういう方がいるのは噂程度に聞いていますが……余程のようですね」


 話には聞くが、そういった人が本当にいるんだなと言う感想だ。個人で行うには理想を追うのも構わないと思うが、子供まで巻き込むものなのかと感心してしまう。


「ええ、もっとも、彼女もそれほど長く続いたわけではないのでそれほど問題になったわけではありませんが……」


 どうやら何かあったようだ。一体何をやってしまったのだろう?


「何かあったんですか? その……ご本人はもしかして」


「ああ、亡くなったわけではないんです。ただ、実家に夫と子供を置いて帰っただけです。まあ随分と遠くなのでいなくなっちゃったのはそうなんですがね」


 どうもただ事ではない雰囲気は伝わってくるのだが、何があったのだろうか?


「自然なら安全ってわけでもないと思うんですがねぇ……あんなもの買っちゃうから」


 Yさんの言葉からは何か非難めいた意図を感じる。その買った『なにか』に関係があるのだろう。


「何をやったんですか?」


「ああ、自然派だっていうのは言いましたよね。彼女、スマホでどうやって見つけたのか、わけのわからないところから自然食品を個人輸入し始めたんですよ。流石にこれには子供たちに『あの家で出されたものは食べないように』とみんな言ってましたよ」


 どうやら怪しいものを買うようになったらしい。慣れない人が見つけてしまうと危ないものはよくあるが、わざわざ見つけたというのは運が悪い。


「子供の話だとキノコの乾物みたいなものだったと言っていましたが、彼女がそれを子供たちにおやつとして出したらしいんですよ。普通そんな不気味なもの出しますかね? しかも包装されていなかったんですよ、噂だときちんと梱包されていたものではなくて、そもそもその形で送られてきたものじゃないかって言われてましたよ」


「それを食べたんですか?」


「ウチの子は食べてませんよ。他の子も食べなかったらしいですし、聞いたところその怪しげなお菓子はその子も食べたくなかったらしく、誰も食べずにそのまま残したらしいです。結局、そのママさんが食べたらしいんですけど、それの何が悪かったのか、体を壊したらしいんですよ」


「まあ……ネットでは素性の知れない食べ物も買えますからね」


 私はそういうことしかできなかった。気分の悪い話であるが、それ以上の情報は分からないらしい。ただし、彼女の子供は父親が面倒を見て、今では普通に暮らしていることがせめてもの救いだろう。

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