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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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風水の利用

 Oさんはとても風水を気にしているそうだ。と言っても決して家庭を良くするためではないらしいが……


「困ってるんですよ……私が同居を切り出した手前文句も言えませんし……」


 そう語るのはOさんの夫である人だ。結婚までは順調だったが、しばらくして高齢になった親との同居話が起きた。悲しい話だが親族総出で誰に押しつけるかで話し合いが起き、結果多少のお金と共に彼が高齢の両親を引き取ることとなった。もちろん奥さんのOさんは大反対していたのだが、親世代が施設には拒否反応を示すため誰かが引き取らざるを得ない状況だった。


「悪いことをしたとは思っているんですよ、ただ、今の状態は酷いものです。受け入れてくれとは言えませんし、私が仕事を辞めるわけにもいきませんから困ってるんです」


 現在夫婦で介護をしているのだが、あまり関係は良くない。仕方ないことではあるのだが、夫の父母とOさんは他人である。どこまできれい事を並べようと自分の人生を消費して他人に奉仕しようなどとは思わないのを責められはしない。


「それで、風水で何かあるんですか?」


 そう訊ねると彼は重い口を開く。


「親を引き取る時に親族から介護が出来るようにリフォーム代金をもらったんですよ。そんなお金があるなら施設に入れろというのが妻の談ですが、私の発言力が足りず恥ずかしいばかりです。妻に申し訳ないとは思っているんですがね……風水で鬼門ってあるじゃないですか? リフォームの計画だけでもやりやすいようにと妻に自由にしてもらったんですが、必死に風水の勉強をして鬼門で北枕になるように介護する部屋を作ったんですよ。両親は……幸いと言って良いのか、多少認知症が入っていまして、自分が寝ている場所がどのような意味を持っているかなんて気にするほど明瞭な意識を持っていないんです」


 両親ともにそんな状態だというのだからOさんの苦労は推して知るべしだろう。と言う過去の夫さんも自分の親なのだから私に話している暇があるならその時間を介護に当ててはどうかと思う。


「そんなわけで、風水として最悪の位置に親がいまして、ドンドン弱っていくんです。私も強くは言えないのでそのままになっているのですが、なんとかしたいとは思っているんですよ」


 本当になんとかしたいのかは怪しいところだが、両親が酷い状態なのは理解出来た。それにしてもどうにかするには自分が面倒を見るくらいしか無いような気がする。


「それで今の一番の悩みなんですが、自分が寝ていると両親の生き霊が両脇にたつ夢をしょっちゅう見るんです。私を憎々しい表情で睨んでくるので敵いませんよ」


 とことん他人事だなとは思う。というか私にそんな怪談でもなく介護問題を持ち込まれても困るのだが……


「妻はニヤニヤと私を見てきますし、絶対私のところに出てきているものを知っているんですよ、その上で放置しているんです。迷惑な話でしょう?」


 果たして迷惑を被っているのは誰だろうか? 目の前のこの人でないことだけは確実だろうと思う。


「お聞きしたいのですが何か霊的な効果のある道具などをご存じではないですか? このままだと私が倒れてしまいそうです」


 私も大変意地が悪いことは承知の上でしれっと首を振った。除霊や結界の類いを扱える人の伝手はあるが、この人には教えない方がいいだろう。教えたところで私のところへとばっちりが来そうなので申し訳ないが教えられない。と言うかこの人なら相談相手を教えたとして相手を怒らせてトラブルになりかねないので私の人脈に悪影響がありそうなことは出来ない。


「地元の神社やお寺に相談してはどうでしょう?」


 私はこの人に相談される相手に同情しながらも手の施しようがないので丸投げすることにした。この人に必要なのは霊的なものではなくカウンセラーか何かではないだろうか?


 何故こんな話をそもそも残したかと言えば、この人はしばし私になんとか鳴らないかと同じ相談を投げてきたので下手をすれば地縛霊より厄介なのではないかと思ったからだ。私にできるのはこの人に何かがあった時にこの人が出てきそうなのでその対策をしたいくらいだ。結局、霊的なものより、人間の方がよほど面倒なのかもしれないと思った一件だった。

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