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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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ゲーマーのパワースポット

「まず怖い話ではなく不思議な話だというのは前置きさせてください」


 不思議な話も集めている私だが、Cさんは初めにそう前置きをした。私は『不思議な話でも歓迎ですよ』と言うと、彼はそれなりに昔の話を始めてくれた。


「何とは言いませんが今でも続いているゲームのシリーズがあるじゃないですか、敵を捕まえ、育てて戦わせるゲーム」


「もちろん知っていますよ。国民的ゲームですしね」


 彼が言いたいゲームは何なのかすぐ分かる。そのくらいには有名なIPだ。


「これはそのゲームがまだモノクロの携帯ゲーム機で動いていた頃の話です、だから今でも再現可能かはとても保証出来ません。ただ、そういったことがあっただけです」


 ここから十年ではきかない前の話が始まる。


「あの頃は教師から両親まで外遊びを推奨していました。割とどこでも出来ましたし、今ほど外で遊ぶのにうるさい人は少なかったんです。でも子供としてはゲームをしたいじゃないですか? だから携帯ゲーム機を外にこっそり持っていってそれでみんなで遊んでいたんです」


 当時の大人は感心しないだろうが、子供なんてそんなものだ。健全になって欲しいと願えば健全になるのなら世界から犯罪など無くなっているだろう。


「それで、当時は今と違って神社のお賽銭に一円や五円を入れるのを止めてくれなんて言われていませんでした。だから大人でも平気で小学を賽銭箱に入れていたんです。それ絡みでどうにも不思議なことがあったんです」


 今では両替にかかるお金の方がかかるので小学をたくさん入れるのは割と好かれない。しかし昔はそういう人でも割と許されていたものだ。キャッシュレスなどという言葉がまだ無かった時代だからだろうか?


 日本に神社は多い、ごく小さいものも含めての話だが、Cさんの学区にも遊べるくらい敷地の広い神社が数軒あった。公園には大きな建物など当然無く、神社には本殿がある。となると目隠しの全く無い公園でゲームをしていれば目につくが、神社の社殿裏でやれば通りがかった人には見えない程度に隠してくれる。そうなると神社裏がゲーム好きたちの社交場になるのは必然だった。


 たまたま財布を持ってきていた子がいて、その子はなんとなく駄菓子を買って余った小銭を数枚賽銭箱に入れていつも通り裏に回りみんなでゲームを始めた。そこで奇妙なことが起きる。そのゲームはランダムエンカウントなのだが、出現するモンスターにはよく出てくるものからレアなものまでいろいろな種類があった。


 その日、お賽銭を入れた子がプレイしていると、レアモンスターにやたらエンカウントした。彼は珍しいということで乱獲して、他にそのモンスターを探し歩いていた子に通信機能で渡していった。それでもまだ余るくらいそのモンスターは捕まえられた。


 こんな事があると他にも神社にレアモンスターが出ますようにとか、ボスに勝てますようにとお賽銭を少額だが賽銭箱に入れる子が幾人か出た。しかもその全員が願ったとおりにゲームが進んだので皆不思議がっていた。


「ま、結局そんな不自然なことをしていれば大人が見逃すはずもないですね。割とすぐに外にゲーム機を持っていくなと言われましたよ」


 それで話は一応終わりなのだが、残念なことにその神社は人口減少と後継者がいなかったことから、あれだけ御利益があったのに、今では放棄されてしまったらしい。彼は未だに地元に帰るとその神社跡を見て、そこにいた神様に思いを馳せていたという。

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