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昔のトンネル

「ご存じだと思いますが、昔のトンネルってオレンジ色のナトリウムランプが使われていたじゃないですか? 最近はそうでないのも多くなりましたが、その時代はご存じですよね?」


 彼の話はそんな質問から始まった。私は頷き思い出を語る。


「そうですね、昔は技術的にアレが一番有用だったらしいですね。今じゃすっかりトンネルの中も白色光に照らされているところがほとんどですが」


 私がそう言うと彼は安心したようにうんうんと頷いて続きを話す。


「そうなんです、あのオレンジ色がどうにもとある一件以来苦手になりまして、最近の技術で色が変わったのは助かりますよ」


 そう言い、彼があの色を苦手としている理由を語ってくれた。


 あれはまだ子供だった頃の話なんですが、親に車に乗せられて高速道路を走っていたんです。今でも忘れませんが、前を走っていたのは真っ白なセダンでした。今はセダンタイプは少なくなってきましたけど、あの頃はほとんどあれでしたね。それはさておき、ごく普通に走っていたので私たちの家族が乗る車もその後ろをついて行ったんです。そこまでは問題無かったのですがトンネルに入ったんです。オレンジ色の光りが中を煌々と照らしていました。


 まだごく普通の事のように思えるのだが、口を挟む前に彼が一番の問題に入った。


 トンネルに入ると真っ白な車はオレンジ色に見えるますよね? そこまでは何も疑問に思わなかったんです。ただ、そのトンネルはそれほど長くはなく、すぐに抜けたのですが、そこで奇妙なことになりまして……前の車がトンネルを抜けたのにオレンジ色なんですよね。もちろん夕日に照らされてとかそんな理由ではないですよ、何故かトンネルで浴びた光の色が移ったように鈍いオレンジ色をしたまま普通に走っているんです。


 そこで両親に前の車おかしくないか? とは言ったのですが、両親には真っ白な車に見えているらしく、アレがオレンジ色に見えているのは車の中で私一人でした。


 それだけならなんとなく不気味な話で済むんですが……何故かその車は急にスピードを上げて一気に私たちの乗る車と距離を離していきました。メーカーは言いませんが軽自動車ではなかったですね。だとしても異様なスピードでした。ただ速く走りたいだけなら急に速度を上げる理由が無いですよね? 初めから早いならともかく、突然加速する理由は無いはずなんです。


 ここまでならギリギリ不気味くらいで済むのですが、その車を見送ってしばらく走ると掲示板に事故渋滞の情報が表示されていたんです。一車線ふさいで渋滞していました。事故処理の現場を見たのですが、あの車が燃えていました。原形をとどめてはいませんでしたが、あの不気味なオレンジ色は間違いようが無いんです。両親にはあの車だと分かっていないようで、『危ないね』なんて言いながら通り過ぎました。


 一回だけならともかくそういった現象が今まで数回あったんですよ……説明のつかない不気味さでして、トンネルが怖くなったんです。でも、不思議なんですがトンネルのランプが白色光になってからそういった現象は一度も遭っていないんですよ。だから多分何かの理由で照明があの色に戻らない限り問題無いとは思うんですけど……やはり不気味なんですよね。


 彼はそう言って言葉を締めた。オレンジ色のランプが何か特殊な能力を呼び覚ましたのか、あるいは不吉な知らせを与えたのかは分からないが、私としてはトンネルの照明の主流が白色光であり続けてくれることを祈るくらいしか出来ない。

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