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旧校舎の肝試し

 Eさんの卒業した高校には旧校舎がある。特に謂れがあるようなものではないが、木造校舎というものに歴史を感じずにはいられなかった。


 旧校舎が取り壊されない理由は様々な噂がある。ある人は自殺した幽霊が出るとか、またある人は取り壊そうとすると事故が起きるとか、平和な憶測ではOBやOGが思い出を壊すのに反対しているなど、好き好きに勝手な推測を口にしていた。


 そこまで様々な話題が出てそうなるのは必然だろう、肝試しをしようとEさんのクラスで彼女の所属しているグループのリーダー的な人が言いだした。もともとオカルト絡みの噂が好きな物好きが多かったグループなので、それほど反対意見は出なかった。怖いからという理由で反対する人は居なかったが、肝試しをするのが深夜ということで見つかったらマズいのではないかと疑問を呈す子もいた。


 そこは向こう見ずな高校生だ、幸いと言うべきか、学生手帳の退学要件には性行不良と刑事事件の加害者になった場合くらいしか書かれていなかった。それを根拠にリーダーは、見つかっても退学にはならないからとゴリ押しして肝試しの開催を半ば強制的に決めた。


 Eさんは正直気が乗らなかったのだが、表立って反対して孤立するのも嫌だし、幸い警備システムも導入しておらず、旧校舎は見回りさえされないほぼノーガードなので渋々ながらも参加することにした。


 決行するのはその夜、深夜徘徊を疑われないように格好には気をつかえとだけ決めて、旧校舎の入り口に集まることで計画は出来た。


 その晩、深夜ではないが、両親になんとか言い訳をする必要があるのだが、そこは放任主義で育てられたリーダーが『内で勉強会をすると言えばいい』と力強く言ったので、その通りの言い訳をして家を出た。


 田舎のため、高校まで電車通学している人はあまりにも厳しいので辞退していたが、原付の免許を取った人は参加することになった。


 Eさんは徒歩で行ける距離に高校があるので参加を必須にされた。この時は通学が不便な人を羨ましく思ったほどだ。


 そうして集まったのは五人、旧校舎の前に集まった。皆少し恐怖感を覚えている様子だが、肝試しだから恐怖感はつきものだし、リーダーはまったく恐れていないようなので渋々旧校舎に入った。


 旧校舎の窓は分厚いカーテンが掛けられているので、壁のスイッチを押して灯りをつけた。ぼうっと光景が浮かび上がってその中を進んでいった。


 しかしリーダーの期待とは裏腹に、何一つ怪現象は起きなかった。ただ、全体的に埃が積もっていて手が汚れてしまったので、旧校舎を出る前に、手洗い場で埃を洗い流して外に出た。そうしてすっかり期待外れに終わった肝試しだったが、その結果を翌日、昨日集まれなかった子たちに話した。途端に不参加だった全員が顔を青くした。


「ねえ……なんで電気が通ってて水道が使えたの? それに鍵を壊すのかと思ったんだけど、それは言ってないだけで実際は鍵を壊したり窓ガラスを割ったりしたの?」


 そう言われて参加していた全員が青くなった。よく考えてみるとおかしいことだらけだ。旧校舎に入る機会はないので施錠がされているはずだし、インフラはとっくの昔に解約済みのはずだ。基本料がかかるのに誰も使わないところを契約する理由は少しも無い。なぜみんなそれを疑問に思わなかったのか? 不思議なのはそれを当然だと思っていたことだ。


 結局、それ以来怪異が起きたわけでは無いが、安易な肝試しを行うことはなくなった。オカルト雑誌を話題にする程度で、実際に心霊スポットに行くような子はいなくなった。


「これが私の体験した怪異の話です、あまり怖くはないですね」


 私はそういう不思議なことだって十分意味のあることですと言い、謝礼とお礼の言葉を述べてその場を去った。申し訳ないがどこの学校かは実際に行く人がでないとは限らないので割愛させていただく。

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