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ホラゲ配信

 Cさんは暇な時間をマイナー配信者のゲーム配信を見ることで時間を潰していた。彼女によると最近はインディーゲームが気軽に公開出来るようになって実況が楽しいと語っていた。私からすれば、昔は大量にPC向けフリーゲームが配布されていた時代を考えるとそれに疑問を挟む余地はあるが、とにかく彼女は退屈しのぎを見つけたわけだ。


「個人的にはホラゲ配信が好きなのですがドンドン新しいのが出てくるので時間はいくらでも潰せるんですよ。人気配信者だとコメントを送っても読まれませんが、収益化もしていない人なら同接が少ないので普通のコメントでも結構読んでもらえるんです。楽しい遊びですよ?」


 なんだか弱小配信者に対して少し歪んだ感情を感じてしまう。しかしそういった人がいるからその配信者さんもモチベーションが出るのかもしれない。誰も見ていないのと一人は見ているのでは大違いなのは分かる。


 そんな中、彼女はいつもの様にホラゲ配信を見ていたのだが、そこで笑えない出来事が起きた。


「その時はたまたま同接一人、つまり私だけだったのでよかったんですが、偶然チャットツールにメッセージが届いた通知が画面に表示されたんです。多分ですけどその人、チャットツールは本名で使っていたんでしょう。もしかしたら仕事でも同じものを使っているのかもしれません。仕事用とプライベート用を分けないことは感心出来ませんが、そんなことより問題はそこに表示される名前でした」


「名前?」


「その名前が私の昔の同級生の名前だったんです。高校に進学してから離れましたが中学までは友人でした。その子はあまり詳しくないのか通知が来ても気にせず配信を続けました。知らない人だったら放置するんですが、その子の名前って珍しいので被るようなものじゃないと思うんですよ……ゲスの勘ぐりと言われてしまえばそれだけですが」


「しかしあなたが見ている時にたまたまチャットの通知が届いただけでしょう? コメントしてあげるかその配信者から離れるとか、いくらでもやりようはあるのでは?」


「それはそうなんですけどね、ただチャットの通知って届いた文のタイトルや本文の一部が表示されるものが多いじゃないですか? そのツールもやはり本文の冒頭が表示されるものだったんです」


「機密情報が漏れたとか、そういう話でしょうか?」


 経済的な話は私のカバー外だ。それで何か怪異が起きたならともかく、ただ見えてはいけないものが見えただけでは怪談として物足りない。


「少し違いますね……実はそのメッセージなんですが、最初は『進捗報告お願いします』という文字が見えたんですが、次第にきついメッセージが垣間見えるようになってきたんです」


 『まだですか?』、『部長が怒ってますよ』、『早くしろって』、『見ろよクズ』、『ロクに働かないんだから返信くらいしろ』、『社会人失格だな』、『家にカチ込むぞ』、『お前内のバックがどこだか分かってんだろうな』、『沈められてーのか』。


「そんな感じで徐々にメッセージがきつくなっていって……最後には口にも出せないような内容になったんです。おかしいのは配信のデスクトップ画面にポンポン音を立ててメッセージが通知されているのに、その配信者は見えてないように平然とゲーム配信を続けるんですよ。外野の私でさえ気分が悪くなるようなメッセージですよ? 当の本人がよく無視出来るなあって思いますもん」


 そこから罵倒は言ってはいけないような言葉がドンドン飛び交うようになったらしい。配信はゲームをクリアして終わったのだが、彼女には悩みがあるそうだ。


「同級生の名前と被っているって言いましたよね? その配信者を調べてみたんですが、その日以降配信を一度もしていないんですよ。だからこの前届いた中学の同窓会の案内にどう返信しようか悩んでいるんです。別人だというならそれで済むんですが……もしその場に彼女が何かの理由でいなかったらと思うとなかなか出席をしようと決められないんです」


 ただのハンドルネームだろうと思いたいのだが、ここには書かないが彼女から教えられた名前は間違って被るようなものではなかったことを付しておく。

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