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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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177/331

使えたの

 Hさんは最近説明出来ない体験をしたそうだ。


「怖い話ではないですよ? ただ少し不思議だってだけで別に幽霊も妖怪も出てきません、そんな話でも構いませんか?」


 そう訊かれ私は深く頷いて話を聞いた。


「最近祖母が亡くなりまして、大往生だったので仕方ないかなとは思っているんですが、説明がつかないんですよね」


 彼女はそう言ってスマートフォンを差し出した。その画面には『ありがとう』とだけ書かれたメッセージが表示されていた。


「これが何か不思議なんですか?」


 私が思わずそう訊ねると、彼女はきちんと説明してくれた。


 祖母が大往生だっていうのは言いましたよね? 祖母は三桁の年齢だったんです。一応スマホは持っていたんですが、使うのと言えばかけた電話に出るくらいのことしか出来なかったはずなんです。


「じゃあこのメッセージは誰か別の人が送ったと?」


 彼女は首を振る。どうやらそう単純な話でもないようだ。


「幽霊だったら分かりやすい怪談なんですけどね……このメッセージが送られてきた時は祖母がまだ生きていて、ベッドの上だけですが自由に動ける状態だったんです。だから理論的には送信出来るはずなんですが……誰一人祖母にスマホの文字入力の方法なんて教えてないんです。携帯電話が普及しきった時にはもう八十台も後半でしたからね、電話としての機能以外を教えた人はいないんです」


 だからそのメッセージが送られてきたことに説明がつかないという。一応代理で誰かが送ったとかがありそうな話だが、彼女が言うには祖母が入院していた時にはスマホにロックがかかっており、電話に出る以外の機能は使えず、訳も分からず使ってしまわないように、こちらからの電話に出る以外のことは出来ないようにしていたらしい。だから本人がスマホのロックを解除することも出来ず、誰かに頼んだならその誰かがロックを解除したことになる、それはあり得ないそうだ。


「祖母自身、持っているだけだったスマホをどうやって操作したのか説明が出来ないんです。このメッセージが送られてきた時は祖母が意識を失う夜の前でしたから、最後の力を振り絞って私にメッセージを送ってくれた、とかだったら救われるんですけどね。出来れば幽霊の類いの仕業でないことを祈ることしか出来ないんですよ」


 未だ納得のいく説明は思いつかないそうだが、彼女としてはどんなに非論理的であっても、『おばあちゃんが自分で送ってくれたと思いたいですね』と言い、説明がつかないのならいっそ都合の良い考えをするようにしているそうだ。

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