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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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キーマップ

「最近ゲーミングPCが流行ってるじゃないですか? で、それにつきもののゲーミングキーボードの話なんですけど、大して怖くないけどいいですか?」


 そんな言葉から始まったのはGさんに最近起きた恐怖体験の話だ。


「ゲーミングキーボードって知ってますよね? 光ってたり反応速度が速かったりするんですけど、高級価格帯だとキーボードのキーをソフトを使用して好きな配置に出来るんです」


 私は頷いてから続きを促した。


「問題はそんなつもりは無いのにキーマップが書き換わっていたんですよ。もちろんソフトなんて使ってません。ただ、どうにも説明がつかないんですよ」


 問題のキーボードはジャンクショップで購入してきた品だ。ジャンクショップとは言っても、完全なジャンクではなく動作確認済みの中古品だ。壊れているわけではないが埃っぽく汚れていた。その時は洗えば問題無いだろうと思っていた。


「割と新しくてあまり綺麗ではなかったですけど、動作に問題無いのに何故かやたらと安かったんです。普通に一万円を超える定価なのに、動作確認済みが二千円で売っていたんです。フリマアプリだってもう少し高値を付けますよ、しかも店舗保証がつくらしいんですが、だったらどう考えてももっと高値で売っていてもいいんです」


 一も二もなくそのキーボードを購入したGさんは、早速それを持ち帰ってビニールを破いてPCにケーブルを繋ぐ。きちんと繋ぐだけでキーボードとして認識した。


「これは掘り出し物を買ったと思って早速ゲームをプレイすることにしたんです。FPSで使えるようにラピッドトリガーに対応している機種だったので、操作がもう少し早くなるはずだったんですが……」


 何故か思うようにキーが働かない。不良品なのだろうか? いや、きちんと動作確認済みと書いてあるのだからこんな分かりやすい誤動作を確認していないはずはない。


「おかしいなと思ってゲームを切断してキーのチェックをしようとしたんです。切断ペナルティは痛いですが、どうせそのままプレイしても勝てっこないですからね」


 それで、押されたキーをチェックするソフトを起動してどのキーがどうなっているのか確認したんです。


 その結果、反応していないキーは一つもなかった。ただし全てのキーマップがめちゃくちゃに割り当ててあり、押されたキーと明後日の方向の文字が対応していた。


「それで、テキストエディタを開いて適当にガチャガチャ叩いてみたんです。そうしたら少し不気味なことになって……」


『わたしはもとかれにころされた』


 そう表示されたんです。本当に適当にキーを叩いただけなんですよ? そんな偶然があるんでしょうか? 不気味だったので結局キーマップ設定ツールをダウンロードしてキーボードを初期化したんですよ、そうしたら普通に使えるようになったんですよ。でも誰がキーマップを変更したんでしょうね? お金目当てにしたって犯人がいるならそんなことをしてから売る理由なんて無いですし……


 私はもっと先に気にすることがあるのではないかと思ったのだが、彼はその不気味な文字列を気にしている様子は無い。


「それで初期化して使ってるんですよ、幸いまだキーマップが勝手におかしくなったりはしてないんですよね」


 彼が未だにそのキーボードを使い続けていると聞いて、思わず『気持ち悪くないんですか?』と聞いてしまったのだが、彼は『別に初期化して以来普通に使えますから。安かったのも全機能が生きているのも事実でしたし、いいんじゃないかなって思ってますよ』としれっと答えられてしまった。


 結局話を終えるまで彼はそのキーボードが無事使えていると喜んでいた。私ならそんな不気味なものはさっさと処分しそうなものだが、彼はまともに使えるならそれで気にしないらしい。

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