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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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おばあちゃんとキツネ

 日下部さんは子供の頃、祖母に命を助けてもらったことがあるそうだ。


「昔と言ってももう本当にずっと昔なのですが、まだまだ昭和が続く頃と言えば分かるでしょうかね」


 そう言って昔の話を始めてくれた。


 私はおばあちゃんっこで母より祖母に面倒を見てもらっていた記憶が多いですね。母も父の会社の手伝いなど忙しかったようで、家を空けるときはおばあちゃんが私の面倒を見に来てくれていたんです。


 当時はまだまだ安全に気をつかった遊びなど一々考えておらず、子供と言えば無茶な遊びもするし、それで怪我をしたり死んでしまったりしても珍しくはなかったですね。大きめの小学校に通っていましたが、長期休暇明けに誰それがいなくなっていることなんて普通でした。先生もハッキリ言ったわけでは無いですが、子供たちの間ではみんな知っていることでしたね。


 そんな中、日下部さんは大病を患ったそうだ。当時は特効薬が無く、対症療法で自然治癒を期待する以外無い病気になってしまい、家族の皆は酷く悲しんだそうだ。


 熱にうなされながらぼんやり寝ていたんですけど、その時夢を見たんです。夢の中ではおばあちゃんが真っ白なキツネに土下座をしていたんです。当時は稲荷様なんて知らなかったので「なんでおばあちゃんはキツネにあやまってるんだろう?」って思いながらぼんやりと夢を見ていたんです。


 その夢の中でキツネはおばあちゃんを尻尾でくるんでしまったんです、後から気がついたのですが尻尾が複数あったんですよね。九尾のキツネってヤツなんでしょうか?


 その後キツネは消えていって真っ暗になった後目が覚めたら熱が下がっていました。私を見ていた医師も体力的に持たないだろうと思っていたら突然快癒して驚いたそうです。とにかくそれで私の病気はすっかり治ったんです。でも目が覚めたときからずっとおばあちゃんは入院していた私に会いに来てくれなかったんです。その前までは普通に来てくれていたんですがね。何でだろうと思ったのですが、とにかく体力が戻って退院すれば会えるだろうと思っていました。


 そうして日下部さんは早々に退院をして自宅に戻った。そこには仏壇に微笑むおばあちゃんの写真が飾ってあったそうだ。まだ親にどうなったかなど聞かなかったがそういうことだとすぐに理解した。そして夢のことは話さない方が良いんだと思った。


 後になって両親に聞いたところによると、日下部さんの祖母はいよいよと言うときに地元の大きな神社に何度も何度も参拝していたそうだ。両親は年を取ったのに体力を使ったのが祟ったのだろうと言っていた。しかし彼女には何が自分を助け、それが一体何を持って行ったのかが理解出来てしまったそうだ。


「私が元気になった代わりにおばあちゃんは逝ってしまったんですね。後から調べたところその神社は稲荷神社として有名なところでした。やはりタダでお願いをかなえてくれるほど神様も甘くないんですかね……ただ、私はおばあちゃんのためにも生きていかないとなとその時に覚悟を決めたんです」


 そう語る日下部さんの目にはしっかりとした意志を感じた。

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