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日本怪奇譚集  作者: にとろ


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出る病院

「病院って怪談の定番じゃないですか? 私は少し違うんですが病院が出たことがあるんですよ」


 病院の階段を知っているという小松さんに話を聞いた時のことだ。割と最近のことらしい。


「実家に帰った時の話です。最近じゃ東京に人口が集まっているので地方じゃ病院も都市部に移っているみたいですね」


 確かに後継者不足でなくなる病院もあるが、一体何が出たのだろうか?


「実家に帰っていたのはお盆の間、十日くらいの連休でした。その間に私は運悪く風邪をひいたんです。実家にいるのはそれなりの年の両親ですからね、うつしたら大変だということで病院に行くことにしたんです。私が小学生の頃に通っていたところです。あそこは小児科と内科をやっていたので通い慣れてますしそこに行こうと決めたんです」


 そうして彼は栄養ドリンクを飲んでその病院まで車を走らせたそうだ。


「病院の駐車場には車が一台もなかったんですよ。休診日だったかと思い車を止めて入り口に行くと自動ドアが開いたので良かったと思って入ったんです」


 そこで一つ声のトーンを落として話してくれる。


「そこには見知った顔がありました。田舎特有の世間の狭さってやつですかね、知り合いが結構居たんです。昔俺をかわいがってくれたり悪いことをした時に怒られた人とかですね。懐かしい気持ちになって挨拶をしたんです。何故か全員ニコニコと笑っているんですよ、病院がいくら老人の社交場と化しているとは言え、一応病気を診てもらいに来たわけですから形だけでも体調が悪そうにしていそうなものですがね。一人も苦しそうな人がいないんです」


 なんとも不気味な光景だなと思ったのだが、受付に受かった。そこでふと意識が途切れたらしい。


「気がついたら病院でした、ああ、さっきまでの場所ではないです。実家から少し離れた総合病院です。目が覚めたら両親が泣きそうな顔で隣に立っていたんです。それでナースコールを押したんです。自分がなんでここに居るのかも分からないまま呼ばれてきた医師と看護師に説明をされました」


 曰く、朝、なかなか起きてこない私を連休で疲れているのだろうと放っておいた両親ですが、午後になりそうな時にもまだ起きてこないので様子を見に行ったそうなんです。そうしたら倒れているのを発見したらしく救急車を呼んだそうです。


 それは後日になって知ったことなんですが、過労で風邪をこじらせて肺炎寸前だったらしいんです。少し危なかったそうですが、幸い発見が早かったので命には関わらなかったそうです。


 それから一息ついて余談を話してくれた。


「内科に行ったって言ったじゃないですか、あの内科なんですけど、後継者がいなかったので先代で閉めてしまったそうなんです。だから私が行ったのはもう存在しない病院なんですよ。しかもその場ではおかしいと思わなかったんですが、よく考えてみるとあの病院の待合室にいた人たちが、全員私が覚えている姿と一緒なんですよね。私が地元を出てから十年じゃ足りませんからね、いくら何でもそのまま変わらないわけがないんですよ。だから私は病院の幽霊に呼ばれたのかなって思っています。人の幽霊はありますけど、場合によっては病院も化けて出るんですかね?」


 私はその言葉に『そうかもしれませんね』としか答えられなかった。

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