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イミテーションの剣

「聞きたいと仰るなら話しますが、あまり……というか全く怖くない話ですよ? それでも良ければ話しますが」


 私は構わないので話して欲しいと頼んだ。オカルトじみたことなら大したことがなくても歓迎だ。


「ではお話ししましょう、アレは小学校の修学旅行まで遡る話なんです」


 そう言ってJさんは昔の奇妙な思い出を話し始めた。


 修学旅行の行き先は京都だったんですが……それはあまり関係無いでしょう、なにしろ大抵の観光地にはあるものですから。


 どうやら観光地で何かあったと言うことは分かるのだが、何があったのだろう?


「キーホルダーってあるじゃないですか、何故かどこの観光地に行っても大抵ある剣にドラゴンが巻き付いたヤツです。なんでどこにでもあるのかは分かりませんが、それについての話です」


 彼は修学旅行で土産物を買うとなったときに集団で来ていたのだが、ノリだけはいいヤツがそのドラゴンの剣を購入した。まだ小学生で旅行慣れもしていないのでそれがどこにでもあるなんて事は知らなかった。だからノリの良い連中が安いヤツを買ってみんなで見せ合ったそうだ。


「そこまでは小学生あるあるだと思うんですが、問題はその夜でして……」


 その晩、泊まることになった旅館でJさんの部屋で事件が起きたのだそうだ。


「目が覚めると一人怪我をして血が飛び散っていたんです。命には全然関係無いですよ、ちょっとひっかいたかな程度の傷でしたから。ただ布団と畳を血で汚してしまったせいで先生方から大目玉を食らいまして、なんでそんな怪我をしたのか問い詰められたんですが、誰も原因を知らなかったんです」


 後味の悪さは残りましたが修学旅行は終わって、翌週の月曜日になりました。そこで悪ガキが俺たちの部屋に泊まった全員を集めてコソコソ話したんです。


 なんでも、旅行から帰ってお土産を整理して家族に配って自室に帰ったところ、剣型のキーホルダーがカバンに付いていることに気が付いた。それを手に取ってみると、剣は鞘から抜けるように出来ていた。鞘と本体を繋ぐチェーンがやたら短いので抜くのは難しかったが、彼はニッパーを使ってチェーンを切り、剣を鞘から抜いたそうだ。


「それで、抜いたとき赤いものが飛び散ったそうで、それを見ると血のような液体だったそうです」


 そいつは『面白いだろ?』と言いたげに話していたが、コイツのキーホルダーでアレだけ起こられたのかと思うと腹も立つのだった。


「話はそれだけなんですが、二つ分からないことがありまして、旅行から帰ってキーホルダーのチェーンを切ったんですよ、じゃあなんで旅行中に血が付くようなことができたのかって話と、そもそもアレはイミテーションで、切れ味なんてあるはずがないんですよ。危ないので当たり前ですがね。でもそいつは間違いなくその剣が怪我の原因だと言って譲らなかったんです。結局、どうして怪我をしたのかは分かりません。ただそれだけの話なんですが、満足していただけましたか?」


 私はコクリと頷き、その真相を考えようとしたのだが、Jさんはもう中年にさしかかっており、彼が小学生だった頃の話を検証するのは難しいだろうと思い諦めた。

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